トルコ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 08:12 UTC 版)
国家安全保障
軍事組織として、陸軍、海軍、空軍で組織されるトルコ軍 (Türk Silahlı Kuvvetleri) と内務省に所属するジャンダルマ(憲兵隊、Jandarma)、沿岸警備隊 (Sahil Güvenlik) が置かれている。兵役は男子に対してのみ課せられている。学歴が高卒以下の場合は兵役期間が15か月であり、大卒以上の場合は将校として12か月か、二等兵として6か月を選択できるようになっている。国外に連続して3年以上居住している場合、3週間の軍事訓練と約5,000ユーロの支払いで兵役免除になる。なお兵役期間終了後は41歳まで予備役となる。2011年末には金銭を納めることで兵役を免除可能となり、事実上良心的兵役拒否を合法化した。兵員定数はないが、三軍あわせておおむね約38万人程度の兵員数である。また、ジャンダルマと沿岸警備隊は戦時にはそれぞれ陸軍・海軍の指揮下に入ることとされている。ただし、ジャンダルマについては、平時から陸軍と共同で治安作戦などを行っている。
指揮権は平時には大統領に、戦時には参謀総長(Genelkurmay Başkanı)に属すると憲法に明示されており、戦時においては文民統制は存在しない。また、首相および国防大臣には軍に対する指揮権・監督権は存在しない。ただし、軍は歴史的にも、また現在においても極めて政治的な行動をとる軍隊であり、また、国防予算の15%程度が議会のコントロール下にない軍基金・国防産業基金などからの歳入であるなど、平時においても軍に対する文民統制には疑問も多い。この結果、軍はいわば「第四権」といった性格を持ち、世俗主義や内政の安定を支える大きな政治的・社会的影響力を発揮してきた。
1960年と1980年にはクーデターで軍事政権を樹立したこともある。近年はエルドアン政権の権限強化とそれに対するクーデター失敗、経済発展に伴う社会の成熟・多様化により、軍部の影響力は以前より低下している。
軍事同盟としては1952年以降は北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、1992年以降は西欧同盟(WEU)に準加盟している。また、1979年それ自体が崩壊するまで中央条約機構(CENTO)加盟国でもあった。2国間同盟としては1996年、イスラエルと軍事協力協定および軍事産業協力協定を締結しており、1998年からは実際にアメリカ合衆国、イスラエルとともに3国で共同軍事演習「アナトリアの鷲」が行われた。
NATO加盟国としては唯一、非欧米国家グループである上海協力機構の対話パートナーにもなっており、2015年にはエルドアン大統領によって正規加盟が要請された[33][34]。軍事装備は西側のものだけではなく、中華人民共和国の協力で弾道ミサイルのJ-600Tユルドゥルムや多連装ロケットシステムのT-300カシルガを導入しており、NATOのミサイル防衛を揺るがすHQ-9やS-400のような地対空ミサイルも中国やロシアから購入する動きも見せた。2010年にはアメリカやイスラエルと行ってきた「アナトリアの鷲」演習を中国と実施し、中国と初めて合同軍事演習を行ったNATO加盟国となった[35][36][37]。
2019年にはロシアの地対空ミサイルS-400を搬入。アメリカ政府はロシアへの軍事機密漏洩を警戒して、F-35戦闘機国際共同開発からトルコを排除した[38]。
南東部においてはクルディスタン労働者党(PKK)との戦闘状態が長年続いている。南隣にあるイラクとシリアに対しても、国境をまたいで活動するPKKやイスラム国など反トルコ勢力への攻撃と、親トルコ派勢力の支援を目的に、派兵や越境空爆をしばしば行っている[39][40]。
2016年には、ペルシャ湾岸のカタールの基地を利用する協定を締結した[41]。
有力な軍需産業を有していて各種兵器の開発と輸出を積極的に行っている。一例を挙げれば、政府系企業の航空宇宙産業(TAI)や民営のバイカル防衛が軍用無人航空機バイラクタル TB2を開発・製造しており、シリア内戦やリビア内戦に投入されたほか、2022年ロシアのウクライナ侵攻にも投入され目覚ましい戦果を上げており、複数の国が輸入している[42](「2020年ナゴルノ・カラバフ紛争#戦術」「#工業」も参照)。
- ^ “Message of President Erdoğan on the Republic Day”. Republic of Türkiye Ministry of Foreign Affairs (2016年10月29日). 2024年4月3日閲覧。
- ^ “Turkish Foreign Policy During Ataturk's Era”. Republic of Türkiye Ministry of Foreign Affairs. 2024年4月3日閲覧。
- ^ “World Bank Open Data”. 世界銀行. 2021年10月29日閲覧。
- ^ “World Bank Open Data”. 世界銀行. 2021年10月29日閲覧。
- ^ a b c d e “World Economic Outlook Database, October 2021” (英語). IMF (2021年10月). 2021年10月29日閲覧。
- ^ “トルコ共和国”. 外務省 (2024年3月20日). 2024年3月29日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n “トルコ基礎データ”. 外務省 (2024年1月29日). 2024年2月11日閲覧。
- ^ Gardening with Tulips. Portland, OR: Timber Press. (2005). p. 16. ISBN 0-88192-744-9
- ^ “トルコ、国連での国名を「テュルキエ」に ブランド刷新と大統領”. BBC (2022年6月3日). 2023年1月7日閲覧。
- ^ “「トゥルキエ」表記広がる トルコ国名変更に欧米配慮”. 47news (2023年1月7日). 2023年1月7日閲覧。
- ^ “the Republic of Türkiye”. The United Nations Terminology Database (2022年5月31日). 2022年6月6日閲覧。
- ^ a b “Turkey rebrands as 'Türkiye,' changing name at the United Nations”. CNN (2022年6月3日). 2022年6月3日閲覧。
- ^ “Why Turkey is now 'Turkiye', and why that matters” (英語). Why Turkey is now 'Turkiye', and why that matters. 2022年4月25日閲覧。
- ^ “Turkey to use 'Türkiye' in all activities to strengthen its brand”. TRT World (2021年12月4日). 2022年1月18日閲覧。
- ^ a b “Turkey to register its new name Türkiye to UN in coming week”. ミドル・イースト・アイ (2022年1月17日). 2022年1月18日閲覧。
- ^ 大村幸弘「和平条約と粘土板が物語ること」/ 大村幸弘・永田雄三・内藤正典編著『トルコを知るための53章』明石書店 57ページ
- ^ 【ニュースの門】帝国復活 トルコ大統領の野望『読売新聞』朝刊2020年11月16日(解説面)
- ^ 「新オスマン主義」「エルドアン大統領 支持の背景」『読売新聞』朝刊2017年4月26日
- ^ 「トルコ:国民投票賛成多数、改憲承認 軍・司法の権限縮小」『毎日新聞』2010年9月14日[リンク切れ]
- ^ 「トルコ、国民投票で憲法改正を承認 首相が勝利宣言」CNN(2010年9月13日)
- ^ 「トルコ、国民投票で憲法改正承認 世俗派との対立先鋭化も EUは歓迎」産経新聞社(2010年9月13日)
- ^ a b “概況・基本統計”. ジェトロ (2023年7月21日). 2024年2月11日閲覧。
- ^ [1]
- ^ [2]
- ^ 日本・トルコ協会
- ^ (社)大阪・トルコ協会
- ^ 九州・トルコ協会
- ^ 北海道日本トルコ友好協会
- ^ 日本トルコ友好協会
- ^ (NPO)日本ガレノス協会
- ^ 日本トルコ文化協会
- ^ 串本トルコ文化協会
- ^ “Turkey Renews Plea to Join Shanghai Cooperation Organization”. The Diplomat. (2013年11月1日) 2015年7月1日閲覧。
- ^ “Turkey aspires to be full member of Shanghai Cooperation Organization: Turkish president”. China Central Television (CCTV). (2015年7月7日) 2015年8月2日閲覧。
- ^ “Sino-Turkish Strategic Partnership: Implications of Anatolian Eagle 2010”. The Jamestown Foundation. (2011年1月14日) 2016年9月9日閲覧。
- ^ “The Anatolian Eagle Is Looking Eastward”. The Daily Signal. (2010年10月15日) 2016年9月9日閲覧。
- ^ “Growing Ties Between Turkey, China, Iran Worry Israel and US”. ハアレツ. (2010年10月7日) 2016年9月9日閲覧。
- ^ 「トルコ、ロシア製S400ミサイル試射か 米反発も」『日本経済新聞』2020年10月17日(2020年10月28日閲覧)
- ^ “トルコ軍、イラクとシリアで越境空爆「テロ準備」主張”. 朝日新聞デジタル. (2017年4月25日)
- ^ “イラク トルコと対立/モスル奪還作戦、参加を拒否”. 『毎日新聞』朝刊. (2016年10月25日)
- ^ 「新オスマン主義」『読売新聞』朝刊2017年4月26日
- ^ トルコ、無人軍用機の輸出拡大「技術移転前向き」が強み/中東などに続き東南ア開拓『日経産業新聞』2020年10月26日(グローバル面)
- ^ 気象の極値 トルコ気象庁 Archived 2011年7月3日, at the Wayback Machine.
- ^ 経済産業省『平成31年度国際ヘルスケア拠点構築促進事業(国際展開体制整備支援事業) 医療国際展開カントリーレポート新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報トルコ編』(PDF)(レポート)2020年3月、6頁 。2020年5月6日閲覧。
- ^ 飯山みゆき (2018年5月23日). “●国際連合「世界都市人口予測・2018年改訂版 [United Nations (2018). 2018 Revision of World Urbanization Prospects.」概要]”. 国際農林水産業研究センター. 2020年5月6日閲覧。
- ^ a b 中島敏博 (2020年3月30日). “トルコの2019年の総人口は8,316万人、失業率13.7%(トルコ)”. 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ). 2020年5月6日閲覧。
- ^ “World FactBook Labor force - by occupation” (英語). CIA (2019年). 2020年5月7日閲覧。
- ^ トルコのアパレル製造活況 欧州の輸入「近場シフト」『日経産業新聞』2021年11月12日グローバル面
- ^ トルコにおけるM&Aの動向
- ^ 【新興国ABC】トルコ、医療物資を海外へ/ものづくり力アピール『日経産業新聞』2020年9月28日(グローバル面)、国際協力銀行のイスタンブール駐在員による寄稿。
- ^ 【世界点描】トルコ、観光客優先に国民不満 コロナ下の外出禁止、適用外『日経産業新聞』2021年5月20日グローバル面
- ^ 「トルコ、外国人客戻る/18年に4000万人、過去最高に/治安回復・通貨安で」『日経産業新聞』2018年5月29日(グローバル面)
- ^ [3]
- ^ “TURKEY”. Global Innovation Index. World Intellectual Property Organization (2021年). 2023年2月25日閲覧。
- ^ “Global Innovation Index 2019” (英語). www.wipo.int. 2023年2月25日閲覧。
- ^ “RTD - Item”. ec.europa.eu. 2023年2月25日閲覧。
- ^ SETENAY NİL DOĞAN (Spring 2009). Sabancı University: “FORMATIONS OF DIASPORA NATIONALISM: THE CASE OF CIRCASSIANS IN TURKEY” (英語). Çerkes Araştırmaları. 2022年2月8日閲覧。
- ^ TRT6(クルド語チャンネル)、ロジンさんらのコンサートで正式にスタート - 2009年1月2日付『Zaman』紙の翻訳(東京外国語大学のページ)
- ^ 平成23年度 トルコ共和国における身分関係法制調査研究 法務省/エァクレーレン・たんぽぽのなみだ:世界の夫婦別姓
- ^ "Prohibiting married women from retaining only maiden names a violation: Top court", Daily News, January 8, 2014.
- ^ 「創造論は、人権への脅威 - 関連案件を欧州委員会議員会議が可決」 - 2007年10月07日付『Radikal』紙の翻訳(東京外国語大学のページ)
- ^ "Turkish scientists claim Darwin censorship" Nature 2009 doi:10.1038/news.2009.150
- ^ “Global Peace Index Map » The Most & Least Peaceful Countries” (英語). Vision of Humanity (2020年7月24日). 2023年3月3日閲覧。
- ^ トルコ安全対策基礎データ 日本外務省海外安全ホームページ
- ^ “Positive Peace Index | The most and least resilient countries in the world” (英語). Vision of Humanity (2021年12月6日). 2023年3月3日閲覧。
- ^ “ネット検閲に突き進むトルコのエルドアン首相―ユーザーやネット企業との果てしなきいたちごっこ”. ウォール・ストリート・ジャーナル. (2014年5月6日) 2017-0501閲覧。
- ^ “〔トルコ〕インターネット法によりさらに表現の自由が制限される恐れ”. 日本ペンクラブ (2014年2月6日). 2017年5月1日閲覧。
- ^ “トルコ大統領、自国のネット規制をツイッターで非難”. ロイター (2010年6月14日). 2017年5月1日閲覧。
- ^ “イスタンブールの反政府抗議運動勃発で、政府がFacebookとTwitterを利用制限か”. Tech Crunch Japan (2013年6月3日). 2017年5月1日閲覧。
- ^ “Facebook, Twitter, YouTube and WhatsApp shutdown in Turkey”. Turkey Blocks (2016年11月4日). 2017年5月1日閲覧。
- ^ “トルコ、ウィキペディアへの接続遮断 「同国中傷の情報源に」”. CNN (2017年4月30日). 2017年5月1日閲覧。
- ^ Sofiya. "Home." Each of seven Turkey regions has its own clothing traditions and features - Nationalclothing.org. N.p., n.d. Web. 21 Feb. 2017.
- ^ 伝統競技 - リジット(トルコ大使館文化広報参事官室)
「トルコ」に関係したコラム
-
FX(外国為替証拠金取引)で取引される通貨ペアは、日本においては米ドル/円をはじめとする円を基軸通貨とした通貨ペアが主に取引されています。 USD/JPY・・・米ドル/円 EUR/JPY・・・ユーロ/...
-
FX(外国為替証拠金取引)の値幅とは、通貨ペアが値上がり、あるいは、値下がりする際の最小の為替レートのことです。例えば、USD/JPYの値幅は0.001円です。USD/JPYが1ドル79.595円の場...
-
FX(外国為替証拠金取引)の通貨ペアで使われているJPYやUSDには次のような意味があります。例えばJPYの場合は「JP」が日本の国名コードでISO 3166-1-alpha-2によって定められていま...
-
2012年6月現在の日本の証券取引所、および、世界各国の証券取引所の一覧です。▼日本東京証券取引所(東証)大阪証券取引所(大証)名古屋証券取引所(名証)福岡証券取引所(福証)札幌証券取引所(札証)TO...
-
株価指数は、証券取引所に上場している銘柄を一定の基準で選出し、それらの銘柄の株価を一定の計算方法で算出したものです。例えば、日本の株価指数の日経平均株価(日経平均、日経225)は、東京証券取引所(東証...
- トルコのページへのリンク