タバコ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/26 13:21 UTC 版)
利用
喫煙するための煙草となるほか、薬用や肥料となる。
薬用
スペインの医師・植物学者であるニコラス・モナルデスは、1571年に『西インド諸島からもたらされた有用医薬に関する書 第二部』を出版し、その中で万能薬として紹介した[13]。
ニコチンは、血管を収縮させる効果があり、止血となる[14][15]。葉に鎮痛・解毒・止血作用がある[16]。
タバコ屑
タバコの葉の屑は、窒素 (N) 1%、リン酸 (H3PO4) 1%、カリウム (K) 5%程度を含み肥料として使われることがある。園芸店やホームセンターで「たばこくず肥料」などの商品名で扱われ、普通に購入可能である。ただし養蚕においては桑の施肥中にタバコ屑が加えられると桑にニコチンが残りカイコの飼育に悪影響が出る可能性が富山県告示第244号「肥料取締法第21条の規定に基づく肥料の施用上の注意等の表示命令について」などに示されている。
生産と管理
葉タバコは紙巻きたばこなどの原料であり世界各地で生産されている。
葉たばこ生産量
FAOの統計によると、全世界の葉たばこの生産量は、635万トン (2002年) であり、全体の3割以上を中国1国で生産している。中国国内では、雲南省・貴州省・河南省・湖南省・四川省の順に生産が多い。雲南省の生産量は66万トンと、世界2位のブラジルよりも多い。
大陸別の生産量はアジアが6割、南北アメリカがそれぞれ1割ずつ、ヨーロッパとアフリカが1割弱という比率になる。たばこで有名なキューバの生産量は3.2万トンと数量としては多くない。日本の生産量は約5万トン。主な産地は黄色種が南九州、バーレー種が北東北であり、2004年における生産量の上位は宮崎県・熊本県・岩手県・鹿児島県・青森県の順である。
中国 - 239万トン (37.7%)
ブラジル - 65万トン (10.3%)
インド - 58万トン (9.1%)
アメリカ合衆国 - 40万トン (6.4%)
ジンバブエ - 17万トン (2.7%)
トルコ
インドネシア
イタリア
アルゼンチン
ギリシャ
1991年時点の生産量は766万トンであり、約10年間で葉たばこの生産量が100万トン以上減少したことが分かる。当時の生産国を生産量順に並べると、中国・アメリカ合衆国・インド・ブラジル・トルコ・イタリア・ジンバブエ・ギリシャ・インドネシアとなる。最も生産が減少したのは中国の70万トン、次にアメリカの35万トン、トルコの10万トンが続く。上位10カ国のうち、生産が増加したのは、唯一ブラジルであり、約25万トン増えた。アルゼンチンも生産量が増加している。
紙巻たばこ生産量と対比
国際連合の統計資料「United Nations Industrial Commodity Statistical Yearbook 2001」によると、2001年の全世界の紙巻たばこの生産本数は5兆4710億本である。葉たばこの最大生産国である中華人民共和国が、紙巻たばこにおいてもシェア 3割を超える最大の生産国となっている。
葉たばこの生産量と比較すると、アメリカ合衆国・ロシア・日本・北欧諸国が原料の輸入国であること、インドネシア・ギリシャ・トルコは農業生産と国内の加工業までが一貫していることが分かる。
中国 - 1兆7000億本 (31.1%)
アメリカ合衆国 - 5800億本 (10.6%)
ロシア - 3740億本 (6.8%)
日本 - 2372億本 (4.3%)
インドネシア - 2300億本 (4.2%)
ドイツ
トルコ
イギリス
オランダ
ブラジル
日本での生産
歴史
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慶長6年 (1601年) に肥前国平戸(長崎県平戸市)に来航したフランシスコ会員ヒエロニムス・デ・カストロが、平戸藩主松浦鎮信にタバコの種子を贈呈している(これを記念して平戸城跡である亀岡神社には「日本最初 たばこ種子渡来之地」の石碑が建てられている)[17]。また同年、ジェロニモ・デ・ジェズスも徳川家康に贈呈している[18]。慶長10年 (1605年) には長崎の桜馬場で、初めてタバコの種が日本に植えられた[19]。
制度
日本ではタバコの栽培は自由化されたものの、葉たばこを原料とした「製造たばこ」の製造はたばこ事業法8条により日本たばこ産業 (JT) 以外には禁止されている[11]。原料用国内産葉たばこの生産に際しては同法3条の定めによって葉たばこを全てJTに売り渡す予定の耕作者とJTがあらかじめ契約をし、契約農家にはJTから種子が無償で配付される[11]。一方、たばこ事業法は原料として使用できないものを除き、農家が売り渡す葉たばこ全量の購入をJTに義務づけている[11]。
なお、JTと栽培農家の契約では取引価格体系の違いによって、黄色種は第1黄色種から第4黄色種、バーレー種は第1バーレー種と第2バーレー種に区分されている。
日本各地に、主に栽培農家が信仰するたばこ神社(葉たばこ神社)がある。
伝統的なタバコの産地
- 水府煙草(茨城県)[20]
- 赤土煙草(茨城県)[20]
- 館煙草(群馬県)[20]
- 高崎煙草(群馬県)[20]
- 秦野煙草(神奈川県)[20]
- 生坂煙草(長野県)[20]
- 清内路煙草(長野県)[20]
- 服部煙草(大阪府)[20]
- 阿波煙草(徳島県)[20]
- 長崎煙草(長崎県)[20]
- 国分煙草(鹿児島県)[20]
日本在来種の中でも国分葉、水府葉、秦野葉は後に三大銘葉と評されるほど品質が高かった。明治期以降全国の葉タバコ生産の見本となり、1907年にはこの3種をブレンドしたたばこが皇室献上用たばこに定められた。現在ではいずれも希少種である[21]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k 佐竹元吉 監修『日本の有毒植物』<フィールドベスト図鑑> 学研教育出版 2012年、ISBN 9784054052697 p.192.
- ^ 田中正武. “タバコ(煙草)”. 日本大百科全書(ニッポニカ)(コトバンク). 2019年5月26日閲覧。
- ^ Tobacco Facts
- ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 180
- ^ 馬場良二「ポルトガル語からの外来語」『国文研究』第53巻、熊本県立大学日本語日本文学会、2008年5月、120(1)-111(10)、NAID 120006773363。
- ^ 『日本国語大辞典』第2版「たばこ」の語誌に載せられた諸説を参照
- ^ Robert K. Barnhart, ed. (1988), “tobacco”, Chambers Dictionary of Etymology, Chambers, pp. 1146-1147, ISBN 0550142304
- ^ 川床邦夫『中国たばこの世界』<東方選書> 東方書店 1999年、ISBN 9784497995681 pp.2-4.
- ^ “タバコに放射性物質含有、製造企業は事実公表せず、厚労省が検証へ…体内被ばくや発がんも”. サイゾー. (2014年5月16日) 2014年5月19日閲覧。
- ^ “タバコ”. 神戸薬科大学. 2023年5月31日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v “「肥料施用学」タバコ”. BSI 生物科学研究所. 2022年1月13日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l “たばこができるまで 栽培”. JT 日本たばこ産業. 2022年1月13日閲覧。
- ^ “ヨーロッパと「たばこ」の関わり スペインと「たばこ」”. JTウェブサイト. 2023年5月31日閲覧。
- ^ “進めたい,日本のたばこ対策(鼎談)”. www.med.or.jp. 2023年5月31日閲覧。
- ^ “其の七 たばこ屋の女房は血止めほどまける”. JTウェブサイト. 2023年5月31日閲覧。
- ^ “タバコ:武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園”. www.takeda.co.jp. 2023年5月31日閲覧。
- ^ NPO法人平戸観光ウェルカムガイド『平戸検定公式テキストブック』49〜50ページ。
- ^ 丸山知雄ほか『タバコ産業の政治経済学』 昭和堂 2021年、ISBN 9784812220245 p.34.
- ^ 日本たばこ産業 (JT) ウェブサイト内 たばこ旅日和 「長崎県『煙草初植地の石碑』」
- ^ a b c d e f g h i j k 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
- ^ “日本が誇る国産希少葉を特別にブレンド 発売10周年を記念した「メビウス・リミテッド エディション」 12月11日より、CLUB JTオンラインショップ等にて発売”. JTウェブサイト. 2024年6月26日閲覧。
タバコと同じ種類の言葉
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