ぼくは王さま
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シリーズ
ここで使用しているシリーズ名は「王さまの本III」「ちいさな王さま」シリーズ以外は便宜上つけたもので、理論社やファンの慣例ではない。 表題作のタイトルは、第一シリーズ新版以外はほとんど言い回しが統一されており、区別しやすくなっている。 かっこ内は個々の短編の発表年月でなく、作品集としての発行年月。 フォア文庫版は第一シリーズ旧版・第二シリーズ・ちいさな王さまシリーズの3シリーズを基本に作られているため、この3シリーズに対し、表題作や収録形態が一部変更されている所のみ解説する。 他の作家と共にアンソロジーとして収録されているケースは非常に多いので、原則として略した。またそうした場合、作品名の表記が「ハアト星のはな」「魔法使いのチョモチョモ」など、微妙に変更されることが多い。
第一シリーズ旧版
シリーズの初期は順序と発行年がそろっていないものがあるが、これは長い年月をかけてシリーズがそろえられたためである(事情の一部については後述)。
前述の『ぞうのたまごのたまごやき』が発表された後、これを読んだ今江祥智が理論社初代社長の小宮山量平に掛け合い、刊行が実現する。続編を何本か収録し、第一シリーズ旧版で最初の作品集として出版された。挿絵は初代画家の山中春雄が43歳で他界(殺人被害)してしまったため、シンプルな直線が目立つ和田誠が担当、寺村の知人の教師の教え子にあたる(和田は他にも寺村の初期作品『ノコ星ノコくん』を担当)。さらに初版ではこのシリーズは寺村以外もすべて、表紙のみ長新太だった。小宮山は自社書籍の出版記念パーティーには出席しないポリシーだったが、当時としては極めて奇抜な内容の作品だったため、業界の批判に対してのフォローをする目的でパーティーに出席したが、幸運にも杞憂に終わった。この時藤田圭雄は「この作品は不思議だ。読むと面白いが、閉じると忘れてしまう。しかしまた開くと、面白さが沸いてくる」と語っている。以降のシリーズに対し当巻だけは和田の挿絵が続いたが、旧版の末期増版から和歌山に交代している。 ぞうのたまごのたまごやき - 『母の友』に掲載 しゃぼんだまのくびかざり - 『日本児童文学』に掲載 ウソとホントの宝石ばこ - 『日本児童文学』に掲載 サーカスにはいった王さま
基本設定はほぼ固まっている。和歌山の挿絵はこの時が初めてで、デッサンが異なる、王さまの髪の毛などベタ(黒い部分)が塗られていないといった違いがある。この小学生文庫版は旧版と比べ約二倍の厚さがあり、後に旧版として作り直す際に『王さまばんざい』と『王さまロボット』に分割された。フォア文庫版の表題作は当初、人気エピソードである『おしゃべりなたまごやき』を使ったが、表題作からシリーズ全体の一貫性が判りにくいため、1998年版からは『王さまばんざい おしゃべりなたまごやき』に改められた。台湾でも台湾英文雑誌社から1995年に発売されている。 おしゃべりなたまごやき 福音館書店版が初出。最も人気の高いエピソードの一つで、シングルカットやアニメ化の対象にもなっている。またラストシーンの小道具が目玉焼きであるため、「おしゃべりなめだまやき」という題名で出た本も存在する。 木の上にベッド クジラのズボン きんのたまごが6つある なんでもほしいほしがりや パクパクとバタバタ - アンソロジー「新編童話教室」(1967年、実業之日本社)では「ぱくぱくとばたばたのはなし」の題で収録。 ニセモノばんざい わすれたわすれんぼ - アンソロジー「よみうりどうわ」(1967年、盛光社)では「王さまのわすれんぼ」の題で収録。 いいことないしょで ひとつぶころりチョコレート 王さまどうぶつえん
- 王さまロボット(シリーズ化1975年)
当巻のエピソード収録の事情(順番)については、そうさくS・F童話『ハアト星の花』と小学生文庫版を参照。 なんでもロボット ヤンコ星の雪 ガルメ星のどく モルト星の石 ハアト星の花 とうめい人間の10時
- 王さまびっくり(1974年)
当巻からはエピソードの大半が書き下ろしとなっている。 王さまびっくり - 後述する「王さまのカラー童話」の「びっくり しゃっくり」が初出。 カレンダーは日よう日 - 「王さまのカラー童話」が初出。 たまごがいっぱい たんじょう日のプレゼント わるい子になりたい まほうのレンズ 見てはいけないたまごやき
- 王さま名たんてい(1977年)
王さまめいたんてい さんすうのじかんです ひみつのフライパン こいのぼりの空 めだまやきの化石
- 王さまたんけんたい(1978年)
ねずみが大さわぎ こいのぼりのそら むくむくもこぞう とけいがぐるぐる 王さまでかけましょう 『おうさまでかけましょう』(フレーベル館、1979年)が初出。また1986年から1999年まで、光村図書の小学2年生用教科書『こくご上』に収録された。 王さまたんけんたい
- 王さまレストラン(1981年)
王さまレストラン くじらのオムレツ 卵を中心とした寺村のエッセイ、『 王さまの料理読本』(みずうみ書房、1979年)が初出。 空をとんだトースト 王さまのくいしんぼう トランプは王さまぬき
- 王さまパトロール(1984年)
王さまパトロール なみだのピッチョン 王さましょうぼうたい ゆめの中でゆめ 王さまタクシー
- まほうつかいのチョモチョモ(実業之日本社1969年→理論社1985年)
- 基本設定とイントロは同じだが、いつもの性格でも魂だけ幽体離脱してしまった王さまと、博士の強引な治療で抜け殻から暴君になった王さま二人に分離してしまう。びわの実会時代の仲間である松谷みよ子が、本作を再録したポプラ社「寺村輝夫童話全集」IIIの解説文で語る所によると「解説文を書く前に、本作の初出作品である『びわの実ノート』連載分とを読み比べてみたが、全体的に大規模な加筆が行われている」とのこと。作品集でなくシリーズ初の長編で(冒頭にも「ながいながい、王さまの話です」とある)、完全に番外編である。後に理論社へ譲渡、正規の第一シリーズに組み込まれたが、ページ数やサブタイトルなどが他のシリーズと合わないのはこのためである。和歌山の挿絵描き直しも旧版では外側のみで、本文中は実業之日本社版のまま、小学生文庫版と旧版の中間的・過渡的な作風で描かれている。講談社青い鳥文庫版・角川書店版・フォア文庫版では、理論社の新版より一足先に『魔法使いのチョモチョモ』の表記で出ている。
- 王さまかいぞくせん(1985年)
- 一冊で全1エピソード。
以後のシリーズは全て、本文中にカラーページを入れるなど、旧版よりカラフルになっている。
第一シリーズ新版
1998年 - 1999年に、ページ数を150ページ程度に減らして収録作品を再構成した(ただし「きんのたまごが6つある」は未収録)。表題作のタイトルが不統一なのはこの理由による。
- 一部表記の漢字化、差別語などの修正もある。
- 1999年版からは背表紙に小さく「新版」と書かれている。
- ぞうのたまごのたまごやき
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- ぞうのたまごのたまごやき
- しゃぼんだまのくびかざり
- ウソとホントの宝石ばこ
- おしゃべりなたまごやき
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- おしゃべりなたまごやき
- 木の上にベッド
- なんでもほしいほしがりや
- パクパクとバタバタ
- ニセモノばんざい
- わすれたわすれんぼ
- いいことないしょで
- 一つぶころりチョコレート
- 王さま動物園
- ハアト星の花
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- ハアト星の花
- ヤンコ星の雪
- ガルメ星のどく
- モルト星の石
- なんでもロボット
- ねずみが大さわぎ
- たんじょう日のプレゼント
-
- たんじょう日のプレゼント
- カレンダーは日よう日
- たまごがいっぱい
- 見てはいけないたまごやき
- わるい子になりたい
- まほうのレンズ
- めだまやきの化石
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- めだまやきの化石
- 王さまめいたんてい
- 算数の時間です
- こいのぼりの空
- むくむくもこぞう
- ひみつのフライパン
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- ひみつのフライパン
- 王さまレストラン
- くじらのオムレツ
- 空をとんだトースト
- 王さまのくいしんぼう
- たんけんたいと消防たい
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- 王さまでかけましょう
- 王さまたんけんたい
- 時計がぐるぐる
- 王さましょうぼうたい
- トランプは王さまぬき
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- トランプは王さまぬき
- クジラのズボン
- 王さまパトロール
- なみだのピッチョン
- 王さまタクシー
- とうめい人間の10時
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- とうめい人間の10時
- ゆめの中でゆめ
- 王さまびっくり
- サーカスにはいった王さま
- 魔法使いのチョモチョモ
- 城や大臣たちが消えてしまうラストシーンは、修正されて悲惨色が薄くなった。ただし本当にとって付けただけの加筆なので、演出に矛盾がある。
- 王さまかいぞくせん
- この節の加筆が望まれています。
第二シリーズ
- 理論社は「王さまの本II」と命名している。
- ページ数は100ページ程度。字も大きくなり、第一シリーズより格段に話がスリムになっている。
- 第一シリーズでは王さまのわがままに大臣たちが振り回される話が多かったが、第二シリーズではいきなり不思議な世界に巻き込まれる話が多くなった。また従来ゲストキャラにはほとんど名前が無かったが、第二シリーズからは各巻に名前のあるゲストが登場する。
- 作品集でなく一冊で一つのエピソードとなり、全て4章構成。
- 王さまの第一人称が『わし』から『ぼく』に変更された。
- 厳密には上記三つの特徴は『王さまかいぞくせん』からその傾向が現れている。
- 和歌山の絵も微妙に変化しており、眼が大きく頭身が小さくなるなど、デフォルメが極端になっている。
- フォア文庫版は下記を刊行順に2本ずつ収録し、下記の奇数番号巻が表題作になっている。
- 王さまなぞのピストル(1990年9月)
- 王さまきえたゆびわ(1991年2月)
- 王さまゆめのひまわり(1991年4月)
- 王さまスパイじけん(1991年10月)
- 王さまうらない大あたり(1992年3月)
- 王さまなくした時間(1992年9月)
- 王さまなぜなぜ戦争(1993年4月)
- 王さまダイマの手紙(1993年10月)
- 王さま魔法ゲーム(1994年4月)
- 王さま魔女のひみつ(1994年9月)
ぼくは王さまIII
一冊一エピソードシリーズ。書き下ろしと以前のシリーズからのシングルカット双方から作られている。ストーリーはさらに簡素になり、童話でなく絵本に近い。またレギュラーキャラにワン=大臣、ツー=コック、ホウ=博士(この名前は前述した「ぞうのたまごのたまごやき」から)、算数の先生=テン先生と名前がつき、チョモチョモも再登場した。
- 王さままほうが大すき(1995年4月) - 書き下ろし
- 王さまでかけましょう(1995年10月) - 再録
- 王さまくじらのズボン(1996年4月)
- くじらのズボン - 再録
- ゆめでカレーライス - 書き下ろし
- 王さまひみつのボタン(1996年11月) - 書き下ろし
王さまのカラー童話
第一シリーズ旧版までしか出ていなかったころ、「おしゃべりなたまごやき」「ぼくは王さまIII」以外にも、シングルカットと書き下ろし双方から作られた、絵本に近い形態の本が講談社から1971年 - 1972年に出ていた。和歌山の絵は比較的初期のため、王さまの服がガウンでなく、小学生文庫版と同じ、ズボンとタスキがけになっているのが特徴のひとつ。絶版となったが、2009年に理論社から「王さまのえほん」として再版。色とわかち書きが修正されている。
- ぞうのたまごのたまごやき
- にせものばんざい
- カレンダーはにちようび - 書き下ろし
- しゃぼんだまのくびかざり
- びっくりしゃっくり - 書き下ろし
新・王さまえほん
2012年に理論社で刊行が開始された絵本シリーズ。
- 王さまめいたんてい
- たまごがいっぱい
- 王さまレストラン
ちいさな王さまシリーズ
いつものヒゲの大人の王さまでなく、小学校に通っており、どうみても王子様である小さな王さまが主人公。「勉強嫌いで学校にも行かない王さまが、もし学校に行ったら?」という発想が、このシリーズのヒントになった。大臣など他のレギュラーのキャラシフトはそのままだが、外見は全員変更されており、パラレルワールドと言える。1巻で懸垂式モノレールが開業したため、城から学校まではモノレール通学になっている。発表時期としては第一シリーズ新版と重なるが、キャラが違うため便宜上この位置にまとめた。
- はらぺこ王さまふとりすぎ(1985年)
- そっくり王さま大さわぎ(1985年)
- うそつき王さまいぬをかう(1986年)
- おりこう王さまおとしもの(1986年)
- さむがり王さまおばけの子(1987年)
- くやしい王さまがいこつじけん(1987年)
- わすれた王さまうみのなか(1988年)
- やくそく王さまたんじょうび(1989年)
- あわてた王さまきしゃにのる(1989年)
- まちがい王さま本になる(1990年)
- フォア文庫
- タイトルが微妙に変更されている。
- あわてた王さまきしゃにのる - この他のみ計4本、他は3本収録。
- 王さまがいこつじけん
- 王さまちびっこおばけ
- 王さまたんじょうパーティー
その他の発行形態(番外編など)
- おむくん とむくん
- (多田ヒロシ、あかね書房、1965年)→オムくん トムくん(理論社、和歌山静子、再版年度不明)
- ストーリー自体は王さまシリーズではなく、寺村の長男と次男の名を借りた二人が主役だが、話の都合上、王さまや大臣がゲスト出演している。
- 消えた二ページ
- (理論社 後世の再版では表記が『消えた2ページ』となる)
- 王さまシリーズのような明るい作風でなく、児童心理のダークサイドを描いた暗い作風の代表作だが、劇中劇として「逃げだせ王さま」という話が登場している。話の雰囲気が王さまシリーズとは大きく異なるため、挿絵は中村宏が担当。後述の「全集・寺村輝夫童話」では王さまシリーズと共に収録されている。
- 寺村輝夫おはなしプレゼント 3 こまったおばさん それからどうした
- (講談社、1994年)
- 寺村の書き下ろしとこれまでの再録を全4巻にまとめたもので、各巻毎に異なる画家が挿絵を担当している。和歌山が挿絵を担当した3巻には、巻末に「王さま電話です」「電話にでるのやめた」が書き下ろされ、理論社以外で発表された最後の王さまシリーズである。ちなみに2巻は永井郁子が担当。
- あいうえおうさま
- (1979年)
- 絵本にっぽん賞を受賞。
- ことばあそびかるた 王さまかるた
- この二点では、寺村は打ち合わせのみで、寺村作品の挿絵も描いた杉浦範茂が構成を行なっている。
その他の発行形態(再録)
その概要は漫画などと比べても複雑を極める。現版では判明している限りのバージョン違いについて、可能な限り作品発表順に挙げている。なお、寺村の死後著作権を引き継いだ長男が、次男と共にこれまでの仕事を調査しまとめる構想を表明したが、息子は著述業や出版とは関係ないサラリーマンであり、本業との兼ね合いなど生活環境の都合もあって、構想は進んでいない。
- 紙芝居(教育画劇)
- ハアト星の花(挿絵:松島わきこ、盛光社、1967年)
- 「○○○星の○」で統一されたSF色が強いエピソード4編の内、 「ガルメ星のどく」「モルト星の石」「ハアト星の花」は、小学生文庫版よりもこのそうさくS・F童話シリーズの方が、わずかながら先に収録された。そうさくS・F童話シリーズで寺村が書いたのはこの一冊だけ。なお理論社の新版では表題作に再度『ハアト星の花』が使われている。
- おしゃべりなたまごやき(福音館書店、挿絵:長新太、1967年)
- ぞうのたまごのたまごやき(福音館書店、挿絵:長新太、1971年)
- こちらは逆に理論社版が最初で、後からシングルカットされたもの。作者・画家・出版社が同じにも関わらず、こちらの王さまはとがった王冠をかぶった、威厳のある外見になっており、全く異なる魅力を持っている。
- まひるのライオン(岩崎書店、1973年)
- これまでに寺村が書いた作品をアンソロジーとして再録したもの。「王さまびっくり」(おしゃべりなたまごやきを改題)、「しゃぼんだまのくびかざり」と、「オムくん トムくん」を収録。挿絵はやはり和歌山だが、寺村・和歌山コンビの中では唯一、他の書籍と異なるリアル気味な絵となっている。
- 寺村輝夫童話全集(ポプラ社、1982年)王さまの話I - V
- 全集・寺村輝夫童話(挿絵なし、1982年-2008年)
- 寺村輝夫のぼくは王さまはじめの全1冊
- 寺村輝夫のぼくは王さまつづきの全1冊
- ぼくは王さま全1冊(1985年)
- 講談社文庫 ぼくは王さま
- 『ぼくは王さま』『王さまばんざい』を収録。
- 『王さまロボット』『まほうつかいのチョモチョモ』を収録。このシリーズのみ『チョモチョモ』の収録順序が違う(第一シリーズでは最後から二番目)のは、前述通り当時はまだ、権利が理論社に譲渡されていなかったため。
- 『王さまびっくり』『王さまめいたんてい』を収録。なお、この巻に出てくるとなりの国のお姫さまだけは、理論社版に比べ、瞳や服などの外見がけばけばしくなっている。
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