Y型褐色矮星
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 19:13 UTC 版)
Y型の分類に何が含まれるべきかについては議論がある。Y型褐色矮星は、T型よりもさらに低温であると考えられている。この分類の天体はモデル化されてはいるものの 、原型である天体が分かっている、よく定義されたスペクトルの配置は存在しない。 2009年、非常に低温な褐色矮星が 500-600 K の有効温度を持っていると推定され、これらにはスペクトル分類として T9 が与えられた。これらの天体は、CFBDS J005910.90–011401.3(英語版)、ULAS J133553.45+113005.2(英語版)、ULAS J003402.77−005206.7(英語版) である。これらの天体のスペクトルは、1.55 マイクロメートル周辺に極大を持っている。Philippe Delorme らによる研究では、このスペクトルの特徴はアンモニアの吸収に起因することが示唆された。またこの特徴の有無がT型とY型の遷移の指標とされ、これらの天体は Y0 型とされた。しかし、この特徴は水とメタンの吸収との区別が難しく、別の研究者らは Y0 の分類を与えたのは時期尚早であると述べている。 2010年4月、新しく発見された超低温の2つの準褐色矮星 UGPS 0722-05 と SDWFS 1433+3 が、スペクトル型 Y0 の原型となる天体として提案された。 2011年2月に Kevin Luhman らは論文で、近傍の白色矮星の伴星である、温度が 300 K、質量が木星の7倍の「褐色矮星」の発見を報告した。この天体は質量としては惑星ではあるが、David R. Rodriguez らはこの天体は惑星と同様の過程では形成されなかっただろうと指摘している。 その直後、Michael C. Liu らは非常に低質量の褐色矮星を公転する「非常に低温」(370 K) な褐色矮星の発見を報告した。その論文の中で、Liu らは「この低い光度、非定形な色と低い温度のため、CFBDS J1458+10B は仮説上のスペクトルY型の有望な候補である」と述べている。 2011年8月、科学者たちは NASA の広域赤外線探査衛星 (WISE) のデータを用いて6個のY型矮星を発見した。これらは恒星のような天体でありながら人体と同程度の温度を持っている。 WISE の観測データからは、数百もの新しい褐色矮星の存在が明らかになった。これらのうち、14個が低温のY型に分類されている。そのうちの1つである WISEPA J182831.08+265037.8 (WISE 1828+2650) は、2011年8月の時点では褐色矮星としては最も低温という記録を持っていた。可視光線をほとんど放射しておらず、恒星というよりは自由浮遊惑星に類似している。WISE 1828+2650 は当初、大気の温度が 300 K を下回ると推定されていた。これは室温に近い温度である。この推定温度は後に改定され、250-400 K と推定されている。 2014年4月には、WISE J085510.83-071442.5 (WISE 0855-0714) が 225-260 K の温度を持ち、質量は 3-10 木星質量であるとの推定が発表された。この天体は視差も非常に大きく、観測された値は太陽系から 7.2 ± 0.7 光年の近距離にあることを意味している。
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