S-IC(第一段)飛行手順
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 15:03 UTC 版)
「サターンV」の記事における「S-IC(第一段)飛行手順」の解説
第一段は2分半の燃焼で2,000トンの燃料を消費し、機体を高度68km、時速9,921km(マッハ8)にまで到達させる。 発射8.9秒前に、まず中央エンジンが点火され、続いて周囲の対角線上にあるエンジンが、機体にかかる負荷を抑えるために300ミリ秒の間隔をおいて点火される。発射2秒前にエンジンが全開になり、機体に搭載されたコンピューターが異常がないことを確認すると、ロケットと塔をつないでいたアームが切り離される。続いて第一段を発射台に固定していたピンが外され、機体はすみやかに離陸を開始する。 機体が完全に塔から離れるまでには、約12秒かかる。その間、強風が吹いて塔と接触したりすることのないように機体は塔と反対の方向に1.25度傾けられる(この運動はわずかなものだが、東西方向から撮影された映像では確認することができる)。高度130mに達すると機体は方位角を合わせるためにローリングを開始し、第二段点火の38秒前まで徐々に角度を傾けていく。このプログラムは、発射が行われる季節の風向きによっても異なってくる。高度約2,000mで秒速480m(マッハ1.4)に達し、飛行の初期段階はもっぱら高度を得ることに費やされ、速度を得るのは後半部分になる。 発射後約80秒で、最大動圧点(ロケットの増速度による動圧の増大と、大気圧の低下による動圧の減少が拮抗する点)に達する。その後も速度は増加し続けるが、気圧の低下による動圧の減少の寄与のほうが大きいので、この時点以上の動圧が掛かることはない。すなわち、「機体が耐えなければならない動圧」という観点では、ここが最も最大となる点である。 機体は燃料を消費することによって次第に軽くなり、さらにF-1エンジンは気圧が低くなると推力が増大するために、加速度はどんどん大きくなっていく。そのため、加速度を4G以下に抑えるよう発射後135秒で中央エンジンは燃焼を停止する。しばらくすると再び加速度は増大するものの、4Gになる直前で第一段の燃焼が終了する。エンジン停止後1秒以内に第一段ロケット上部の8基の固体燃料ロケットが噴射され、機体を上段ロケットから引き離す。高度67kmで切り離されたS-ICは、その後放物線軌道をとり高度110kmまで上昇し、発射場から560km離れた大西洋上に落下する。
※この「S-IC(第一段)飛行手順」の解説は、「サターンV」の解説の一部です。
「S-IC(第一段)飛行手順」を含む「サターンV」の記事については、「サターンV」の概要を参照ください。
- S-IC飛行手順のページへのリンク