IT'S A POPPIN' TIME
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『IT'S A POPPIN' TIME』 | ||||
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山下達郎 の ライブ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | 1978年3月8-9日 六本木PIT-INN “SPACE CRUSH” & “MARIE”:ONKIO HAUS & RVC |
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ジャンル | ロック ポップス |
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レーベル | RCA ⁄ RVC 2LP:RVL-4701/2 |
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プロデュース | 山下達郎 | |||
山下達郎 年表 | ||||
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『IT'S A POPPIN' TIME』(イッツ・ア・ポッピン・タイム)は、1978年5月25日に発売された山下達郎通算1作目のライブ・アルバム。
目次
解説
1978年3月8日と9日に、六本木のライヴ・ハウス「ピット・イン」で行われたライヴの模様を収録した、2枚組ライヴ・アルバム。
ソロ・デビューして1年半、アルバムは2枚出たが音楽専門誌や評論家をはじめとする一般的なメディアでの評判はあまり芳しくなかった。それまでの2枚のアルバムからはシングル・カットが1枚もなく、シングルがなくてはメディアの興味はひけず、アルバム主体という地味な謳い文句では到底認めてもらえない。1978年春、そろそろロック系のフィールドからもヒットが出始めていたこともあって、山下に対するレコード会社や原盤会社の目も次第に厳しいものになっていったという。
山下にとってバンドからソロに転向して一番困ったのがライヴが思うように行えず、本数が激減したことだったという。ソロ活動を始めた直後からライヴのためのパーマネントなバック・バンドの編成を何度も試みたが、自分の納得できる演奏技術を持っている人はすでに一流として名が通っていてギャラが高く、予算が合わなかった。かといって、格を落として安いミュージシャンを使うと演奏に満足できないというジレンマ。結果、安いギャラでやってもらえるライヴ・ハウスと、自治会の払うギャラが良かったので採算が合う学園祭という、一流のスタジオ・ミュージシャンを使っても予算の折り合う場所での活動に限定されてしまっていた。それでもアルバム『SPACY』[1]がリリースされた直後から少しずつながらもライヴが行われ、1977年の終わりごろには村上秀一(ドラム)、岡沢章(ベース)、松木恒秀(ギター)、坂本龍一(キーボード)に山下自身のギターというライン・アップで固定されていた。このメンバーなら、ホールでのライヴだとギャラの問題からまったく採算が取れないが、ライヴ・ハウスであれば安いギャラで来てもらえた。このころは収容人数200~300人のライブ・ハウスであれば会場を満員にできたので、PA代にメンバーのギャラ、そして山下自身はノー・ギャラでちょうど採算の折り合いがつけられたという。
そうした形態でライヴを繰り返すうち、もとより上手い人たちだったので次第に演奏に色付けが出てきた。そんな山下のライヴを見たディレクター小杉理宇造から、このメンバーでライヴ・レコーディングによるアルバム制作が提案された。実は小杉の目論見は別のところにあって、過去2枚のスタジオ・アルバムのようには予算をかけられない状況では、経費がかからないライヴ・アルバムが最善の策だという判断からだった。もともと小杉はシュガー・ベイブの解散ライヴを見て契約しようと考えたいきさつがあり、山下のライヴ・パフォーマンスをアルバム化することに彼なりの自信もあったのだという。
本作のレコーディングが行われた六本木の「ピット・イン」は、ジャズやフュージョンが中心のライヴ・ハウスだったが、山下はそうしたジャンルに多くの知己がいて、よくセッションなどで出入りしていた。さらに同じビルの上階にあったCBSソニー六本木スタジオと回線が繋がっていて、いつでもライヴ・レコーディングが可能だったこと、ピット・インで山下のようなスタイルのシンガーがライヴを録音するということが初めてだったことなど色々なメリットから、ライヴはここで行われることになったという。
ライヴ・アルバムを作るにあたって山下は、ダニー・ハザウェイのライヴ・アルバムのようなイメージを念頭に置いて、いわゆる歌もの中心ではなく、インプロヴィゼーションをメインに据えたものにしようと考えていたとし、レパートリィに未発表曲が加えられているのも、単なるライヴ・アルバムにはしたくないという意図が働いていたからだという。ところが演奏時間の関係でアルバムは2枚組となったため、レコード会社からは「売りにくい」と、前にも増して文句を言われる結果になってしまったという。
前2作のアルバムの歌詞カードが誤植が多かったことから、オリジナルLPでのクレジットと歌詞カードは全て山下自身の手書きになっている。アナログ盤のジャケットはゲートフォールド仕様。インナーのライヴ・フォトは伊島薫で、彼がプロ・カメラマンとしてスタートした最初の仕事だったという。
収録曲
DISC 1
SIDE A
- スペイス・クラッシュ (Space Crush)
- (山下達郎)
- 練馬の実家から首都高速に乗って都心に向かう時、ちょうど完成したばかりのサンシャイン60が眼前に現れる場所があり、曇りの日で上部が雲に隠れて見えなくて、「あれじゃバベルの塔だ」と連想した経験に基づいて作られた曲。当時はテープ・レコーダーが16トラックで、リズム・トラックを録音した後は一人多重コーラスを行うにはチャンネルが足りなく、そこで、16トラックの中で一度ミックス・ダウンを行って2トラックのカラオケにした後、残りの14チャンネルを使ってコーラスを録音し、ある程度重なったらまた一つにまとめてといった具合に、後戻りのきかないリスキーな方法でレコーディングされた。山下によれば「吉田保の技術あればこそ」とし、アルバム1曲目だけがスタジオ・レコーディングなのは、単なる気分だという。
- 雨の女王 (Rain Queen)
- (山下達郎)
- 本作のために書き下ろされた新曲。このリズム・セクションで映える曲をという、座付き作家の発想で書かれているという。1980年代に入ってもライヴで好んで演奏されていた。
- ピンク・シャドウ (Pink Shadow)
- 時よ
- (吉田美奈子)
- ©1978 Alfa Music, Ltd.
- 吉田美奈子のカヴァー。後にアルバム『LET'S DO IT -愛は思うまま-』[2]に収録されるが、この時点では吉田はこの曲をまだレコーディングしていなかった。オリジナルでの“あなたは私を”という箇所を”あなたを僕は”に変えて歌われている。山下は「ピンク・シャドウ」とは反対に、このときの演奏は今聞くと解釈がやや控えめだという。
- シルエット (Silhouette)
- (吉田美奈子, 山下達郎)
- 本作のための書き下ろし曲。緩急のつけ方や変拍子など、アンサンブルの呼吸が難しい曲だが、このくらいの難易度でないと、メンバーを真剣にさせられなかったという。
SIDE B
- ウインディ・レイディ (Windy Lady)
- (山下達郎)
- もとはシュガー・ベイブ時代からのレパートリィだったが、レコーディングの機会がなかったため、アルバム『CIRCUS TOWN』[3]に収録された。構成メンバーによってさまざまな解釈で演奏されてきたが、山下によればこの演奏はその中でも一番ジャジーなものだという。
- 素敵な午後は
- (吉田美奈子, 山下達郎)
- アルバム『SPACY』[1]収録曲。山下は、各自の持ち味が良く出た、コンパクトな演奏だという。
- ペイパー・ドール (Paper Doll)
- キャンディ (Candy)
DISC 2
SIDE C
- エスケイプ (Escape)
- (山下達郎)
- 本作での初収録曲。山下がソロ・シンガーとしてデビューした頃、彼の音楽スタイルは都会的で洗練された音楽だとして“シティ・ミュージック”と呼ばれ、当時の雑誌でも“シティ・ボーイ、シティ・ガールのための***”といった語句があふれ、その用語の陳腐さに反発して出来た曲だという。
- Hey There Lonely Girl
- (Earl Shuman, Leon Carr)
- © Famous Music Inc. The rights for Japan
assigned to Nichion Inc. - ルビー & ザ・ロマンティックス(Ruby & the Romantics)1963年のヒット曲「Hey There Lonely Boy」をエディー・ホールマン(Eddie Holman)が「Hey There Lonely Girl」として1969年にカヴァーして、これもヒットとなった。この頃、日本では裏声で歌う男性シンガーがほとんどいなかったので、他との差別化を図るいいセールス・ポイントになるとして、こういうタイプのカヴァーを歌い始めたのがきっかけだという。
SIDE D
- ソリッド・スライダー (Solid Slider)
- (吉田美奈子, 山下達郎)
- アルバム『SPACY』[1]収録曲。もともとライヴでのインプロヴィゼーションを考慮して作られた曲だが、レコーディングとは違うメンバーが演奏すると、また雰囲気が大きく変わるという。
- サーカス・タウン (Circus Town)
- (吉田美奈子, 山下達郎)
- アルバム『CIRCUS TOWN』[3]収録曲。この当時ソロとしての総レパートリィが20曲に満たない時代だったので、この曲がライヴでのラスト・ナンバーだった。
- Marie
Musicians |
山下達郎: Rythm Guitar & Vocals |
村上“Ponta”秀一 Drums |
岡沢章 Bass |
松木恒秀 Lead Guitar |
坂本龍一 |
Acoustic Piano Fender Rhodes Moog Polyphonic Synthesyzer & Arp Odyssey |
土岐英史 Alto Sax & Soprano Sax |
伊集加代子 Background Vocals |
吉田美奈子 Background Vocals, Fender Rhodes Piano in “Escape” |
尾形道子 Background Vocals |
PRODUCED BY 山下達郎 |
All Songs Arranged by 山下達郎 |
Session Co-odinater 小杉理宇造, 京極謙 (P.M.P.) |
Recorded Live at PIT-INN Roppongi, Tokyo | |
in March 8 & 9, 1978 (using TAMCO's 16 Track MCI) | |
except “Space Crush” & “Marie” Recorded at ONKIO HAUS & RCA 1st |
Remixed at RCA 1st usic MCI 16 Track Recorder & API Mixing Console |
Recording Engineer 吉田保 |
Remixing Engineer 吉田保 |
Assistant Engineer 伊藤俊郎 ONKIO HAUS |
All songs published by © 1978 P.M.P. except indicated |
All voices on “Space Crush” & “Marie” song by 山下達郎 |
Art Direction 佐藤憲吉 |
Cover Design 佐藤憲吉 & 杉山明 |
Photographs 小暮徹 (Cover) & 伊島薫 (Inner) |
2CD:BVCR-170145/6
『IT'S A POPPIN' TIME』 | |
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山下達郎 の ライブ・アルバム | |
リリース | |
録音 | 1978年3月8-9日 六本木PIT-INN “SPACE CRUSH” & “MARIE”:ONKIO HAUS & RVC |
ジャンル | ロック ポップス |
レーベル | RCA ⁄ BMGファンハウス 2CD:BVCR-170145/6 |
プロデュース | 山下達郎 |
チャート最高順位 | |
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解説
2002年、“山下達郎 RCA/AIRイヤーズ 1976-1982”として、『CIRCUS TOWN』[3]から『FOR YOU』[6]までの7タイトルが山下監修によるデジタル・リマスタリング、および、自身によるライナーノーツと曲解説。CDには各タイトル毎に未発表音源を含むボーナス・トラック収録にてリイシューされ、本作には収録時間の関係でアナログ盤未収録だった2曲をボーナス・トラックとして収録。また、本作を含むRCA/AIRイヤーズ対象商品7タイトル購入者に応募者全員への特典として、リマスター盤『COME ALONG』がプレゼントされた。
収録曲
Disc 1
- スペイス・クラッシュ (Space Crush)
- Words & Music by 山下達郎
- ©1978 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- 雨の女王 (Rain Queen)
- Words & Music by 山下達郎
- ©1978 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- ピンク・シャドウ (Pink Shadow)
- Words by 岩沢二弓, Music by 岩沢幸矢
- ©1974 THE MUSIX PUBLISHER
- 時よ
- Words & Music by 吉田美奈子
- ©1978 ALFA MUSIC, INC.
- シルエット (Silhouette)
- Words by 吉田美奈子, Music by 山下達郎
- ©1978 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- ウインディ・レイディ (Windy Lady)
- Words & Music by 山下達郎
- ©1976 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- 素敵な午後は
- Words by 吉田美奈子, Music by 山下達郎
- ©1977 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- ペイパー・ドール (Paper Doll)
- Words & Music by 山下達郎
- ©1978 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- キャンディー (Candy)
- Words by 吉田美奈子, Music by 山下達郎
- ©1977 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
Disc 2
- エスケイプ (Escape)
- Words & Music by 山下達郎
- ©1978 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- HEY THERE LONELY GIRL
- Words by Earl Shuman, Music by Leon Carr
- © 1963 MUSIC SALES CORPORATION, New York, N.Y., U.S.A.
Rights for Japan controlled by K.K. Music Sales
Authorized for sales Japan only
- ソリッド・スライダー (Solid Slider)
- Words by 吉田美奈子, Music by 山下達郎
- ©1977 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- サーカス・タウン (Circus Town)
- Words by 吉田美奈子, Music by 山下達郎
- ©1976 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- MARIE
- Words & Music by 山下達郎
- ©1978 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- <Bonus Tracks>
- ラブ・スペイス (Love Space) (未発表 -Previously Unreleased-)
- 未発表 -Previously Unreleased-
- Words by 吉田美奈子, Music by 山下達郎
- ©1977 FUJIPACIFIC MUSIC INC.
- このライヴ・アルバムのレコーディングが行われた1978年3月8日と9日のピットインでは、この曲が1曲目だったが、アナログ盤の収録時間の都合で未収録となった。この頃はライヴの絶対数が少ない上、こういったハイ・ノートを要求される曲は、歌の出来が良くないという。フェイド・アウト直前で次曲「WINDY LADY」のイントロが聴こえる。
- YOU BETTER RUN (未発表 -Previously Unreleased-)
- Words & Music by Felix Cavaliere & Eddie Brigatti
- ©1966 EMI APRIL MUSIC INC. ⁄ JEMAXAL MUSIC INC.
- ラスカルズのカヴァーも20分という時間の長さから、アルバム収録から外された。山下によれば、岡沢章のベース・ソロが聞けるだけでこのテイクには価値があるとし、「LOVE SPACE」とこの曲を加えて、演奏された主要曲はすべて収録できたという。
クレジット
“LIVE”
山下達郎: |
Lead Vocal & Electric Guitar |
村上“PONTA”秀一: Drums |
岡沢章: Bass |
松木恒秀: Electric Guitar |
坂本龍一: Keyboards |
土岐英史: Alto Sax & Soprano Sax |
伊集加代子: Background Vocals |
吉田美奈子: Background Vocals |
尾形道子: Background Vocals |
“SPACE CRUSH”
山下達郎: |
Lead Vocal, Electric Guitar (Right), Percussion & Background Vocals |
村上“PONTA”秀一: Drums |
岡沢章: Bass |
松木恒秀: Electric Guitar (Left) |
坂本龍一: Keyboards |
土岐英史: Soprano Sax |
“MARIE”
山下達郎: All Voices |
スタッフ
Produced & Arranged by 山下達郎 |
Production Co-odinater: 小杉理宇造 |
Recording & Mixing Engineer: 吉田保 |
Recorded Live at PIT-INN Roppongi, Tokyo in March 8 & 9, 1978 | |
except “SPACE CRUSH” & “MARIE” Recorded at ONKIO HAUS & RVC, | |
Mixed at RVC using MCI 16 Track Recorder & API Mixing Console | |
except Bonus Tracks Mixed at PLANET KINGDOM in Sep. 2001 |
Assistant Engineer: 伊藤俊郎 (ONKIO HAUS) |
CD Mastering Engineer: 原田光晴 (On Air Azabu) |
Original Art Direction: 佐藤憲吉 |
Original Design: 佐藤憲吉 & 杉山明 |
Cover Photographs: 小暮徹 |
Inner Photographs: 伊島薫 |
CD Design: 高原宏 & 上原加代 |
Originally Released in 1978/5/25 as RCA RVL-4701~2 |
脚注
- ^ a b c d 『SPACY』 1977年6月25日発売 LP:RCA ⁄ RVC LP:RVL-8004
- ^ 吉田美奈子『LET'S DO IT -愛は思うまま-』 1978年10月25日発売 ALFA LP:ALR-6011
- ^ a b c 『CIRCUS TOWN』 1976年12月25日発売 RCA ⁄ RVC LP:RVL-8004
- ^ 『GO AHEAD!』 1978年12月20日発売 RCA ⁄ RVC LP:RVL-8004
- ^ CMヴァージョンはファンクラブ通信販売アルバム『山下達郎CM全集 Vol.1 (Second Edition)』(1996年6月発売 WILD HONEY RECORDS CD:WCD-8002)に収録。
- ^ 『FOR YOU』 1982年1月21日発売 AIR ⁄ RVC LP:RAL-8801
外部リンク
- IT'S A POPPIN' TIME - SonyMusic
「IT'S A POPPIN' TIME」の例文・使い方・用例・文例
- テストでAをとる
- オールA, 全優
- Apr.はAprilの略語です
- 彼女はいつも試験でAを取る
- その線は点Aでもう一本の線と交差している
- ABC航空をご利用いただきありがとうございます
- A級のミルク
- その辞書をとってくださいto Aの形をとって
- A型肝炎
- 直線ABに平行に線を引きなさい
- 寄贈者の名をABC順に表にした
- 「今学期の成績はどうだった」「かなりいい成績を取ったよ.Aが4つに,Bが2つ」
- Aマイナスの成績
- テープのA面を聞く
- 私の名のつづりはT, H, O, M, A, Sです
- 彼女はまたAから始めた
- ABCタクシーは2年前に開業した
- ビタミンA
- A(の業務)をBにアウトソーシングする
- 私はまず、この点をAmandaに確認します。
固有名詞の分類
山下達郎のアルバム |
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