ICRPによるALARA の考え方
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 16:50 UTC 版)
「低線量被曝問題」の記事における「ICRPによるALARA の考え方」の解説
一方で、原水爆実験による被曝は日本に限らない国際的な問題であったことから、国際放射線防護委員会(ICRP)もその1958年の勧告において、放射線防護の基本的考えとしてALAP(As Low As Practicable:実用可能な限り低く)と呼ばれる概念を導入した。これは概ね 放射線に対するいかなる被ばくにも白血病その他の悪性腫瘍を含む身体的効果および遺伝的効果を発現させる危険がいくらかあるという慎重な仮定に基づいている。……この仮定は、まったく安全な放射線の線量というものは存在しないということを意味している。委員会は、これは控え目な仮定であり、いくつかの効果の発現には必要な最小線量、つまりしきい線量があるかもしれないことを認めている。しかし、積極的に肯定する知識がないので、低線量でも障害の危険があると仮定するという方針が、放射線防護の基礎として最も合理的である。 — ICRP Publication9 第29項、出典:環境・安全専門部会報告書(環境放射能分科会) という前提の下で、「被ばく線量は実用可能な限り低くすべきある」(doses be kept as low as practicable)という考え方である。 さらに、ALAPという表現は、様々な検討を踏まえた上で、内容をより明確に表わすため、ICRP Publication 22(昭和48年勧告)において、ALARA(As Low As Reasonably Achievable:合理的に達成できる限り低く)という表現に変更されることとなった。これは、 すべての被曝は社会的、経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成可能な限り低く抑えるべきである という基本精神に則り、被曝線量を制限するという考え方である。「社会的、経済的要因を考慮して」という条件がついていることからわかるように、これは、できるだけ被曝線量は低く抑えようと努力する一方で、低い被曝線量をさらに最小化しようという努力が、その効果に対して不釣り合いに大きな費用や制約、犠牲を伴う場合には、よしとしないというものである。
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