D型戦時標準船導入との比較
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/15 03:28 UTC 版)
「第三青函丸」の記事における「D型戦時標準船導入との比較」の解説
小型機帆船案はともかく、貨物積載量が車両渡船に近い1,900総トンで速力10ノットの一般型貨物船のD型戦時標準船と、2,800総トンで速力15.5ノットの車両渡船を比較すると、D型戦時標準船は総トン数は少ないが、積載貨物量は車両渡船の約1.3倍と多く、構造も単純なため、建造費は35%、使用鋼材量は半分で、一見D型戦時標準船優位に見えた。 鉄道省はこの一般型貨物船のD型戦時標準船等を青函航路に就航させた場合の車両渡船との比較の試算を行い、海軍艦政本部の説得工作を図った。 車両渡船は片道4時間30分、荷役のための停泊時間が1時間30分で1日2往復の運航を当時実際に行っていた。一方D型戦時標準船は片道6時間30分、荷役のための停泊に17時間30分も要し、2日で1往復しか運航できないとして計算された。車両渡船1隻がD型戦時標準船4隻に相当するが、D型戦時標準船の積載量が1.3倍であることを考慮すれば3.1隻程度となった。 車両渡船の1回の停泊時間は1時間30分で、1岸壁では1日10回の荷役が可能となり、これは車両渡船5隻10往復分である。D型戦時標準船が1.3倍積載できることを考慮すれば、車両渡船10往復分はD型戦時標準船7.7往復分に相当する。2日で1往復のD型戦時標準船を7.7往復させるには15.4隻必要で、同時に両港には6面ずつ岸壁を確保する必要があった。 以上より、建造費35%、使用鋼材量半分の一般型貨物船のD型戦時標準船で車両渡船の代替をするには、3倍以上の隻数と6倍の岸壁を要し、それらの岸壁には長時間荷役中の貨物列車を留置する引込線も必要とした。そのうえ車両渡船ではほとんど不要であった荷役に伴う経費も発生し、輸送速度も約1日遅れるため、車両渡船建造の方が明らかに得策であった。 なお実際の試算では、D型戦時標準船への積荷が雑貨なのか石炭なのかで、積載重量や荷役時間にかなりの差が出ていたが、車両渡船優位の結論に揺るぎはなかった。
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