AEDと医師法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 06:08 UTC 版)
AEDは医療機器と定義されており、AEDの使用は、医学的知識をもって行うのでなければ傷病者の生命身体に危険を及ぼすおそれのある行為、つまり「医療行為」である。「医療行為」は医師法第17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」により医師以外には禁止されている。つまり元々はAEDは医師または看護師しか使えなかった。救急隊員も使えなかった。 そこで2004年に厚生労働省は、「医業」とは、(1)当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為(「医行為」)を、(2)反復継続する意思をもって行うこと」と解し、「たまたま心室細動や無脈性心室頻拍の者に遭遇した一般市民がAEDを使用することについては、一般的には、反復継続性が認められないため、医業には該当せず、医師法違反とはならないものと考えられる」とした。 ところが、救急隊員や消防隊員、警察官、警備員などは「反復継続性」があり「業」としてそれを行うことになる。現に救急救命士でない救急隊員や消防隊員はAEDは使えない。救急救命士の資格はそのためにあるし、実際には救急車にはたいてい救急救命士が同乗しているから問題は少ないとしても、警察官、警備員、航空機の客室乗務員、さらには学校の先生、保母さんなど「業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心停止者に対し応急の対応を行うことがあらかじめ想定される者」となるので、その「医行為」は本来は医師法第17条違反である。つまり非常事態に遭遇する可能性が一般市民より高く、見殺しにした場合には非難の的になるような人達のAED使用は現行法では認められないことになる。 そこで、政府・構造改革特別区域推進本部の決定を受けて、心室細動を起こした者の救命処置には迅速なAEDの使用が必要であること、AEDは自動化されており危険性は比較的低いこと、AEDの使用は突発的な緊急時に限定されることなどから、少なくとも次の4つの条件を満たす場合には、医療従事者ではない「AEDを使用することがあらかじめ想定されている者」がAEDを用いても、医師法違反とならないものとするとの方針を明らかにした。 医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得ることが困難であること 使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認していること 使用者が、自動体外式除細動器の使用に必要な講習を受けていること 使用される自動体外式除細動器が医療用具として薬事法上の承認を得ていること しかしこれは行政の見解であって、法律そのものや司法の判例によって保護されたものではない。
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