黒い排水
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 08:54 UTC 版)
本州製紙江戸川工場では1958年3月下旬に、日産70トンのケミカルパルプの製造装置を導入した。原材料として、これまで使用していた松に代えて原木資源として有望な広葉樹を使用する設備で、亜硫酸アンモニウムで広葉樹木材中のリグニンを抜くため、黒褐色の排水が発生した。工場長は、この排水はほぼ中性であり、茶褐色をしているが多量の川の水で薄められるため、有害とは思っていなかった。 会社の技術担当役員は、5月17日に採取した黒い排水の原液の分析結果を 水素イオン濃度(pH)が、6.8 全固形分が、148.6 g/l 灰分が、2.4 g/l 全亜硫酸が、7.6 g/l 揮発性酸が、18.8 g/l 全糖が、9.2 g/l リグニンが、34.9 g/l 廃液量は、毎秒0.003トンであり、大きな排水路で280倍程度に希釈されて放流される。 と報告し、会社としては害はないと結論した。 本州製紙社長(木下又三郎)は、「工場の排水は無害だという報告を受けており今の設備でいいと考えているが、今回の問題で、排水を沈殿池に導いて万全を期すことにしている。黒い排水の漁業被害については、漁場の状況を詳しく知らないので詳しい調査をしていないが、以前に愛知県で同様の問題があったときの調査では、全部が当社の排水が原因であったかどうか疑問をもっている」と陳述した。 千葉県水産商工部水産課長は、国会質疑までに判明している点として、5月19日に工場の排水口の近くで採集した工場排水の動物実験結果を、 工場排水の原液にフナを入れたところ、直ちに全部死んでしまった。 工場排水を二分の一に薄めたところ、十五分後に全部死滅した。 十分の一に薄めた場合に、五日後に全部死んだ。 淡水での飼育では、全然異常がなかった。 と報告し、水質分析の結果として、 水素イオン濃度(pH)が、3.4という非常に強い酸性であった。 生物化学的酸素要求量(BOD)が、289ppmであった。 化学的酸素要求量(過マンガン酸カリ消費量)が、普通の水では2 - 30程度のところ、289ppmであった。 精査中であるが、非常に多量の繊維が含まれている。 と報告し、このまま放置すると魚介類の被害は今後増大すると考えていると陳述した。 東京都経済局長は、5月13日から14日に実施した水質試験と生物試験を報告した。 排水口の下流50mでは、約100%のアユの斃死率。 500mでは、32%の斃死率。 京成電鉄の下流では、4%の斃死率 水質分析では、 水素イオン濃度(pH)が、4.2以下。 溶存酸素(DO)が1.39。 であった。
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