麻酔・鎮痛
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 04:07 UTC 版)
麻酔薬としての用量は1-2mg/kgである。 一部の新生児専門家は、脳発育に対する潜在的な有害性がある可能性を懸念しており、ヒト新生児に対する麻酔薬としてのケタミン使用を推奨していない。発育の初期段階における神経変性の変化は、ケタミンと同じ作用機序のNMDA拮抗剤で示されている。 多くの麻酔薬が血圧降下作用をもつのに対し、ケタミンでは血圧上昇を伴う。そのため、プロポフォールやフェンタニルなどの降圧性麻酔薬と併用することも多い。プロポフォール、ケタミン、フェンタニルを併用する麻酔は、PKF麻酔と呼ばれる。皮膚表面の手術に使用されることが多い。 ケタミンは血圧や呼吸を抑制せず、筋肉注射が可能であることから、静脈注射をしにくい動物用としても重宝されてきた。また、この特性から麻酔銃の麻酔としても用いられてきた。 中枢感作症候群(小さな痛み刺激が長期間継続すると、徐々により大きな痛みとして知覚されるようになる症状。ワインドアップ現象ともいう)を抑制するため、神経因性疼痛などの慢性疼痛の治療における効果が見直されている。 他の解離性麻酔薬と同じように大脳皮質などを抑制し、大脳辺縁系に選択的作用を示すため、その他の麻酔薬のように呼吸を抑制しないが、過量投与や静注速度が早すぎる場合に呼吸抑制が起こり得る。動物実験では、中枢性呼吸麻痺によって死亡することが分かっている。 内臓などの体内深部よりも、浅部における麻酔効果が高く、麻酔から覚醒した後も鎮痛作用は持続する。副作用として悪夢を引き起こすことが多いことが知られている他、嘔吐中枢を刺激して嘔吐を誘発する。 気管支拡張作用のため、気管支喘息を持つ患者にも比較的安全に使用できるが、昇圧作用があり頭蓋内圧の上昇や脳血流量の増加が見られるため、脳血管障害、虚血性心疾患、高血圧の患者にはあまり使用されない。呼吸抑制作用が弱く、患者は麻酔中でも自発呼吸を行うことが可能だが、分泌物が多くなるほか大量使用時には呼吸抑制が現れるため注意が必要である。 脳圧、眼圧を上昇させるため、脳外科の手術や緑内障患者では使用しにくい。精神的な副作用や脳圧の上昇はベンゾジアゼピンの併用で少なくなるともいわれる。
※この「麻酔・鎮痛」の解説は、「ケタミン」の解説の一部です。
「麻酔・鎮痛」を含む「ケタミン」の記事については、「ケタミン」の概要を参照ください。
- 麻酔・鎮痛のページへのリンク