飛行中の修理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/11 23:04 UTC 版)
ミッションの3回目の船外活動では、写真撮影で判明したシャトル下面から飛び出しているギャップフィラー(耐熱タイル間の詰め物)の対処が行われた。NASA によると、これらのギャップフィラーにはそれぞれ別の目的があり、再突入には必要無い、ということであった。一つは固体燃料ブースタと外部燃料タンクの先端から発生する衝撃波により、タイルがチャタリングを起こさないようにするためのものである。もう一つは、タイルの隙間が広い箇所にあり、単純に隙間を狭くするためものであり、熱がシャトルに伝わらないようにするためのものである。このフィラーが無くても再突入時に問題が起きるほど温度は上昇しないだろう、と NASA は考えた(温度の上昇を抑えるためのもので、機体の設計寿命以上に繰り返し使った時にしか問題とならないはずである)。ギャップフィラーが再突入に必要無いことがわかり、単純にそれを取り除くことが認められた。フィラーの処理手順を含む概要は無線で乗員に伝えられ、シャトルで印刷された。また、NASA の地上要員が修理のデモを行っているビデオもアップロードされた。ビデオと12ページの手順書は、NASA のウェブサイトで公開されている。 3回目の EVA で、何の工具も必要とせず、1ポンド以下の力で両方のフィラーを取り除くことに成功した。スティーブン・ロビンソンによる作業の実況は、次の通りである。「フィラーを掴んだ。引っ張ると簡単に取れた。」・・・「この大きな問題は解決したようだ。」 フィラーを引き抜くことができない場合には、単純に突出部を切り落とすだけでもよかった。ギャップフィラーはセラミックが浸透した布製で堅く、弓のこ刃のような道具で簡単に切ることができる。ギャップフィラーが飛び出していると、オービタが再突入する時に下面での正常な層流が乱され乱流が発生する問題がある。乱流が発生すると、熱い空気と冷たい空気がかき混ぜられ、シャトルの温度に大きな影響を及ぼされる。 修理を行うという決定は、EVAを行う事でタイルを損傷させてしまう危険性と、飛び出したギャップフィラーをそのまま残しておく危険性との兼ね合いであった。それまでのミッションでもギャップフィラーが同じ程度に飛び出していたことも考えられるが、軌道上で観測されたことはなかった。ISS のアームを使ってスティーブン・ロビンソンをシャトルの下に運ばなければならない手順や、鋭い道具を使うことで宇宙服やタイルを傷つける恐れがあることも危険だと考えられた。修理を試みることで事態がより悪くなる可能性も深刻に考えられた。シャトルの下での活動は、シャトルアームとロビンソンのヘルメットに取り付けられたカメラでモニターされた。 以前のミッション、特に STS-28 でも、飛び出したギャップフィラーを取り除くことは問題点として認識されていた。飛行後の分析で、再突入時に観測された高温はギャップフィラーによって引き起こされたものではないかと特定されていた。STS-73 でも、ギャップフィラーの飛び出しは起きていた。 左舷の船長側窓の下にあるサーマルブランケットが損傷し、それを取り去るかクリップする修理が検討された。NASA の行った風洞テストでは、再突入には影響が無く、4回目の船外活動は行われないことになった。
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