風速計の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 07:33 UTC 版)
気象観測に用いられる風力計、風速計には、圧力風力計(風による圧力が何らかの表示器に観察可能な変位を引き起こすもの)と回転式風速計(風によって水平軸もしくは垂直軸を回転させ、その回転速度を測るか回転数を数えるもの)がある。それぞれは独立に発達していった。 圧力風力計は、レオン・バッティスタ・アルベルティ(Leon Battista Alberti)が、1450年頃に初めて風圧を板の傾きで測る風力計(swinging-plate anemometer)を考案した。1667年にロバート・フック(Robert Fooke)が風力計を作った。彼が作った風力計は、長方形の板に風があたってその強さに応じて板が吹き上げられ、その吹き上げられた角度で風の強さを知るものだった。18世紀中頃には、物理学者ピエール・ブーゲ(Pierre Bouguer)が、バネの伸び縮みで風圧を測定する可搬型の風力計を作った。 圧力管を使った実用的な風力計は、1775年にイギリスの医師のジェームズ・リンド(James Lind)が作った。これはU字管のそれぞれの口の圧力差で風圧を測定するものだった。この型の風圧計は、1889年にイギリスの気象学者ウィリアム・ダインス(William Dines)が実用的で精巧な風圧計(ダインス風速計)に改良した。 回転式風速計は、その発達の際に自然と風車が参考にされた。ロバート・フックは自記気象観測装置用に、風車のように羽が風に対して垂直に回転する風車型の風速計を開発したが、実際には製作されなかった。この型の風速計は風向計としても使えるため、近代になって発達した。日本では1961年からこのプロペラ型風向風速計(エーロベン)が導入されている 。 水平に回転させる方式の風速計は、1673年ごろにフランスの時計職人だったルネ・グリエ(Rene Grillet)が開発した。彼の風速計は水平十字の各横木に4枚の薄板を蝶番でつないだものだった。1846年にアイルランドの天文学者トーマス・ロビンソン(Thomas Robinson)は、4杯式の風杯型風速計(ロビンソン風速計)を考案した。これは比較的回転が遅いため記録のための機構が簡便で済み、また風車型のように風向に合わせる必要もないため広く普及した。ところが、19世紀後半からカップの回転が風速と合わないという疑念が指摘され始めた。1926年にカナダ気象局の気象学者パターソン(John Patterson)が風洞実験から3つのカップを持った3杯式の優位性を提唱して、以後3杯式風杯型風速計が広まった。
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