風に乗るほかなし島のはぐれ鷹
作 者 |
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季 語 |
はぐれ鷹 |
季 節 |
秋 |
出 典 |
はぐれ鷹 |
前 書 |
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評 言 |
『はぐれ鷹』(本阿弥書店、平成17年)所収。季語は「はぐれ鷹」。季節は秋。 10月に入りさしもの長かった沖縄の夏もやっと終りを告げ、その月の10日前後に行われる那覇まつりが始まる頃になると、上空には南をめざす鳥の渡りが見られる。そのころの北風を新北風(みーにし)と呼ぶのだが、その風に乗って北から南へと島伝いにとぶ鷹(サシバ)の群れは沖縄本島北部や宮古島を伝い台湾、そして南をめざす。でも、なかには怪我などで飛びたてない鷹も出てくる。それらを、落鷹、迷い鷹、はぐれ鷹などと呼んでいる。 平良雅景。大正11年~平成25年。沖縄県宮古島生。本名賀計。台北帝大医学専門部卒、昭和28年より昭和32年まで慶応大学医学部神経科教室入局。昭和34年那覇市にて精神神経科天久台病院設立、院長、後に会長。 なお、宮古中学に入学する1年前には篠原鳳作がその中学を去り鹿児島へ転勤している、そのことを「私は旧制中学のころ、「しんしんと肺碧きまで海の旅」を諳んじていた」とあとがきに記しているが、十代の多感な頃に出あえた詩人の魂に触れ、以来その詩心を持ち続けやっと八十余歳にしての第1句集の上梓となった。故郷宮古島から300キロ離れた那覇で開業した自分自身を「はぐれ鷹」と詠む雅景の心、この句からは故郷への限りない愛着と共に申し訳なさも漂いそくそくと深い孤独感を感ぜずにはおれない。 ここ数年、渡り鳥の数が目に見えて減少している。鷹の渡りの見られる本島北部の山原(やんばる)の森もそうだが、開発の進む宮古島の自然林の消滅にも危機感を持つ。人間も鷹も同じ地球のいきものなのに。夕暮れどきに「ピークイ。」と鳴く落鷹の声はせつない。 撮影:松本達子 沖縄県うるま市金武湾(きんわん) |
評 者 |
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備 考 |
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