離散ラプラス演算子としての解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/13 00:05 UTC 版)
「ラプラシアン行列」の記事における「離散ラプラス演算子としての解釈」の解説
ラプラシアン行列は、離散ラプラス演算子(英語版)の特定の事例の行列表現として解釈することができる。このような解釈によって、例えば、ラプラシアン行列を無限の数の頂点と辺を持つグラフ(無限サイズのラプラシアン行列となる)の場合に一般化することが可能となる。 ϕ {\textstyle \phi } がグラフにわたる熱分布を記述すると想定する( ϕ i {\textstyle \phi _{i}} は頂点 i {\textstyle i} における熱である)。ニュートンの冷却の法則に従えば、節 i {\textstyle i} と節 j {\textstyle j} の間を移る熱は、もし節 i {\textstyle i} と節 j {\textstyle j} が連結されているならば、 ϕ i − ϕ j {\textstyle \phi _{i}-\phi _{j}} に比例する(節が連結されていないならば、熱は移らない)。 すると、熱用量 k {\textstyle k} について、 d ϕ i d t = − k ∑ j A i j ( ϕ i − ϕ j ) = − k ( ϕ i ∑ j A i j − ∑ j A i j ϕ j ) = − k ( ϕ i deg ( v i ) − ∑ j A i j ϕ j ) = − k ∑ j ( δ i j deg ( v i ) − A i j ) ϕ j = − k ∑ j ( ℓ i j ) ϕ j . {\displaystyle {\begin{aligned}{\frac {d\phi _{i}}{dt}}&=-k\sum _{j}A_{ij}\left(\phi _{i}-\phi _{j}\right)\\&=-k\left(\phi _{i}\sum _{j}A_{ij}-\sum _{j}A_{ij}\phi _{j}\right)\\&=-k\left(\phi _{i}\ \deg(v_{i})-\sum _{j}A_{ij}\phi _{j}\right)\\&=-k\sum _{j}\left(\delta _{ij}\ \deg(v_{i})-A_{ij}\right)\phi _{j}\\&=-k\sum _{j}\left(\ell _{ij}\right)\phi _{j}.\end{aligned}}} 行列-ベクトル記法では、 d ϕ d t = − k ( D − A ) ϕ = − k L ϕ {\displaystyle {\begin{aligned}{\frac {d\phi }{dt}}&=-k(D-A)\phi \\&=-kL\phi \end{aligned}}} これから、 d ϕ d t + k L ϕ = 0 {\displaystyle {\frac {d\phi }{dt}}+kL\phi =0} が得られる。 この方程式が、行列 −Lがラプラス演算子 ∇ 2 {\textstyle \nabla ^{2}} を置き換えている熱方程式(英語版)と同じ形式であることに気付く。ゆえに、Lは「グラフラプラシアン」と呼ばれる。 この微分方程式の解を探すため、1階の行列微分方程式(英語版)を解くための標準的な技法を適用する。すなわち、Lの固有ベクトル v i {\textstyle \mathbf {v} _{i}} ( L v i = λ i v i {\textstyle L\mathbf {v} _{i}=\lambda _{i}\mathbf {v} _{i}} )の線形結合として ϕ {\textstyle \phi } を書く。時間に依存する ϕ = ∑ i c i v i {\textstyle \phi =\sum _{i}c_{i}\mathbf {v} _{i}} 。 元の式に代入する(ここで留意すべきは、Lが対称行列であるためにその単位ノルム固有ベクトル v i {\textstyle \mathbf {v} _{i}} は直交であるという事実を用いる点である): d ( ∑ i c i v i ) d t + k L ( ∑ i c i v i ) = 0 ∑ i [ d c i d t v i + k c i L v i ] = ∑ i [ d c i d t v i + k c i λ i v i ] = d c i d t + k λ i c i = 0 {\displaystyle {\begin{aligned}{\frac {d\left(\sum _{i}c_{i}\mathbf {v} _{i}\right)}{dt}}+kL\left(\sum _{i}c_{i}\mathbf {v} _{i}\right)&=0\\\sum _{i}\left[{\frac {dc_{i}}{dt}}\mathbf {v} _{i}+kc_{i}L\mathbf {v} _{i}\right]&=\\\sum _{i}\left[{\frac {dc_{i}}{dt}}\mathbf {v} _{i}+kc_{i}\lambda _{i}\mathbf {v} _{i}\right]&=\\{\frac {dc_{i}}{dt}}+k\lambda _{i}c_{i}&=0\\\end{aligned}}} この解 c i ( t ) = c i ( 0 ) e − k λ i t {\displaystyle c_{i}(t)=c_{i}(0)e^{-k\lambda _{i}t}} である。 前掲のように、Lの固有値 λ i {\textstyle \lambda _{i}} は非負であり、これは微分方程式の解が(指数関数的に減衰するか一定に留まるかのいずれかのみであるため)平衡に近づくことを示している。これは、 λ i {\textstyle \lambda _{i}} と初期条件 c i ( 0 ) {\textstyle c_{i}(0)} が与えられれば、いかなる時点における解も見つけることができることも示している。全体の初期条件 ϕ ( 0 ) {\textstyle \phi (0)} の観点からそれぞれの i {\textstyle i} に対する c i ( 0 ) {\textstyle c_{i}(0)} を探すためには、単純に ϕ ( 0 ) {\textstyle \phi (0)} を単位ノルム固有ベクトル v i {\textstyle \mathbf {v} _{i}} へと射影する。 c i ( 0 ) = ⟨ ϕ ( 0 ) , v i ⟩ {\displaystyle c_{i}(0)=\left\langle \phi (0),\mathbf {v} _{i}\right\rangle } 無向グラフの場合は、 L {\textstyle L} が対称行列であるためこれはうまくいき、スペクトル定理によって、その固有ベクトルは全て直交する。そのため、 L {\textstyle L} の固有ベクトルに対する射影は単純に、指数関数的に減衰し、互いに独立な一連の座標への初期条件の直交座標変換である。
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