隊の分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/27 15:21 UTC 版)
もともと寄せ集めだったドナー隊は、ここまでさまざまな予期せぬ試練に苛まれた結果、いくつかの派閥に分裂し、派閥ごとの生存を優先して他者を信用せず、時にはあからさまに敵視すらするようになった。草が次第に減り家畜は日に日に衰弱し、家畜の負荷を減らすため全員歩くことが求められた。キースバーグは幌馬車から年配のハードクープを降りさせ、歩かないなら死ぬしかないと伝えた。数日後、両足が腫れ上がって裂けた状態で小川の側に座り込んでいるハードクープが目撃されたが、それが彼を見た最後となった。ウィリアム・エディはハードクープを捜すよう周りに懇願したが、誰も応じず、70歳近い男のためにこれ以上物資を無駄にできないと言われた。 その間、リードはドナー家に追いつき、御者のウォルター・ヘロンとともに先行した。2人は1頭の馬を共用し、1日に25 - 40マイル(40 - 64キロ)進むことができた。残りの一行もドナー家に追いついたが、不運は続いた。アメリカ原住民がグレイブス家の馬をすべて追い散らし、ほかにもう1台の馬車が放棄された。草が不足したために家畜が前より分散し、その隙をパイウート族に突かれて1晩で18頭が盗まれ、数日後の朝にはさらに21頭が殺された。ここまでに一行は牡牛と家畜を100頭近く失い、食料はほぼ完全に尽きていた。目前にはもうひとつ砂漠が広がっていた。エディ家は牡牛をアメリカ原住民に殺されたため、幌馬車を捨てざるを得なくなった。一家は食料が尽き、ほかの家族はエディ家の子どもを助けようとしなかった。エディ家は徒歩を強いられ、子どもを背負いつつ渇きに苦しめられた。マーグレット・リードとその子どもらも馬車を失った。しかし砂漠はすぐに終わり、一行は緑の美しく豊かな土地に出てトラッキー川(英語版)を見つけた。 休む時間はほとんどなく、降雪前に山脈を越えるべく出発したところ、スタントン(助けを求めて1か月前にカリフォルニアに向かった2人のうちの1人)が戻ってきた。彼は騾馬と食料のほかに、ルイスとサルバドールという2人のミウォーク族(英語版)の男性を伴っていた。彼はまた、リードとヘロンが憔悴し飢えながらもカリフォルニアのサッター砦にたどり着いたと知らせた。この時点で、ラリックによれば「旅塵に汚れ、半ば飢えたドナー隊の人々には、問題の最悪の部分は過ぎたと思えただろう。彼らはすでに過去のいかなる移民団よりもひどい目に遭ってきた」。
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