酸味と物理量との対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/17 06:58 UTC 版)
酸性のものがすっぱい:59。そのため、酸性が強い(水素イオン濃度が高い、つまりpHが低い)ほど酸味が強いと思われがちだが、実際にはpHの大小と酸味の強さは必ずしも対応しない。個々の酸物質に限ってみると、酸物質の濃度(通称「酸度」あるいは「滴定酸度」)のほうが酸味と関連が強い。 マグニチュード推定法という官能評価手法では、被験者に複数種類の濃度の酸溶液を味見させて「AはBの何倍の酸味と感じるか」の数値を記述させる。この数値を計算処理した結果得られた酸味の値Sと酸の濃度Cとの間は、 S = k C n {\displaystyle S=kC^{n}} というべき乗の関係で近似できたとの報告がある。測定値の例(濃度Cの単位がmol/Lの場合): 乳酸 n=0.84, k=165.2:372 T2 酒石酸 n=0.82, k=274.0:372 T2 クエン酸(無水物) n=0.72, k=201.0:372 T2 イタコン酸 n=1.03, k=706.0:372 T2 実験した24種類の酸の平均 n=0.85:372 T2 べき指数nの意味は、実際の濃度変化に対して感覚的に酸味がどの程度変化するか。n=1なら濃度変化と同じに感じ、1未満なら感覚的変化が鈍い。たとえばn=0.85なら、濃度Cが10倍になったのに感覚的な酸味は 10 0.85 = 7.08 {\displaystyle 10^{0.85}=7.08} 倍にしか感じない、という意味。酸の種類によってnが異なるということは、ヒトの感覚系は酸の種類によって反応のしかたが異なるということである。 係数kのおおまかな意味は、二種類の酸物質を仮に1 mol/L溶液同士で比較した場合には、kが大きい酸ほど酸味が強いはず(ただし実際には1 mol/Lは口にするには高濃度すぎる)。1 mol/L以外の濃度ではこのような単純比較はできず、Sを計算する必要がある。 なお、一見すると化学的な量と酸味の強さとの関係のように見えるグラフでも、実際には酸味の強さではなくて単に別の物質の濃度との関係をあらわしているだけのものがある(例: :(59)5 図5,:728 F2,:66 2図)。これらの調査結果からは「濃度が何倍になると酸味が何倍強く感じられるか」はわからないので注意。
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