遺伝コードの起源についての理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 20:33 UTC 版)
「コドン」の記事における「遺伝コードの起源についての理論」の解説
地球上の生命体によって用いられている遺伝コードには変形は見られるにせよ互いによく似ている。地球上の生命体にとって、同様な利用価値のある遺伝コードはほかに多くの可能性があるのだから、進化論的には、生命の歴史のきわめて初期に遺伝コードが確立したことが、次のことを考慮しても示唆される。tRNAの系統学的解析によって、今日のアミノアシルtRNA合成酵素のセットが存在する以前にtRNA分子が進化してきたと推定された。 遺伝コードはアミノ酸へのランダムな対応ではない。例えば同じ生合成経路に関与するアミノ酸はコドンの第1塩基が同じ傾向がある。物理的性質の似たアミノ酸はよく似たコドンに対応している傾向がある。 遺伝コードの進化を説明しようとしている多くの理論に貫かれている3つのテーマがある(3つのパターンはこれが起源である)。1つは最近のアプタマー(リガンド結合能のあるオリゴヌクレオチド)実験で説明されている。アミノ鎖の中にはコードする3塩基トリプレットに選択的な化学的親和性をもっているものがある。これは、現在のtRNAと関連酵素によって行われている複雑な翻訳機構は後代になって発達してきたものであって、元々はタンパク質のアミノ酸配列は塩基配列を直接の鋳型としていたことを示唆する。もう一つは、今日われわれが目にする標準遺伝コードはもっと簡単なコードから生合成的な拡張プロセスを経て発達したと考える。この考えは、原始生命体は新しいアミノ酸を(例えば代謝の副産物として)発見し、のちに遺伝コードの機構に組み入れて行った、とする。現在に比べ過去にはアミノ酸は種類が少なかったと示唆される状況証拠は沢山あるが、どのアミノ酸がどういう順でコードに入れられたかの正確かつ詳細な仮説は議論が大きく分かれている。なお、2018年1月現在、チロシンとトリプトファンについては、20-24億年前の酸素増大イベント(大酸化イベント)に耐えるために獲得された可能性を、量子化学計算と生化学実験から提示した研究が発表されており、アミノ酸の機能的特性が遺伝暗号を決定づけていたことを示唆している。3番目は、遺伝コードでのコードの割り当ては、突然変異の効果が最小となるように自然選択が作用してなされたとする。
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