運用上の重要な注意点:反証主義の判定結果が後に反転することがあるという問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/07 16:00 UTC 版)
「反証主義」の記事における「運用上の重要な注意点:反証主義の判定結果が後に反転することがあるという問題」の解説
反証可能性と反証を混同する。反証可能性のある主張が後に反証されることがある。これはもとの主張が科学的であったことの証である。たとえば英語圏において白鳥はスワンと呼ばれる。「スワンは白い鳥である」という主張は事実として受け止められていたが、オーストラリアに「黒いスワン」(日本語では黒鳥)が発見され最初の命題が覆された。重要なのは主張に反証可能性があるかどうかで、それが反証されるか反証されないかは事実認定(科学)の問題であり、反証主義、ひいては哲学の問題ではない。 反証主義の基準を満たしていなくても、後に反証主義の基準を満たす事例がある。(反証実験が不可能だったことが、後に実験可能になり、真だったと、判明することがある)超弦理論は現時点では数学による仮説であり、超弦理論の主張を何らかの形で観測、測定することは不可能である。よって現時点では超弦理論は正確には科学理論ではない。何らかの反証可能性のある測定、観測を打ち出すことが超弦理論の課題とされている。 科学的メカニズムと反証主義による方法論的科学を混同する。脚気は感染病と信じられていたが、高木兼寛が二隻の軍艦を使って行った実験で、食事療法によって脚気が防げる、あるいは治るという結果が出ても医学者の多くがそんなものは科学ではないとしてかたくなに感染病だと主張したため、日露戦争において日本陸軍では脚気による多量の死者が出た。当時はビタミンの存在、さらにビタミンの欠乏により様々な病気が起こることが知られていなかった。その代わり病原体の感染によって病気がおこることは知られていた。医学者が科学的でないと主張したのは病理(メカニズム)が明確になっていないということであり、これは反証主義による科学の定義とは別である。高木兼寛が二隻の軍艦を使って行った実験は立派な科学である。特に医学においては治療法が確立されたずっと後になってその生理的、生化学的、免疫的メカニズムが解明されることが多い。医学に「治療の側面と生物学の側面」(cf. 疫学と病理学の対比)の両方があることを示唆するものである。
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