運営航空会社の経営破綻に対するリスク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 22:44 UTC 版)
「マイレージサービス」の記事における「運営航空会社の経営破綻に対するリスク」の解説
マイレージサービスのマイレージは、航空会社が顧客に対して未来における値引きや、金券、品物、サービス等との交換を約束したものである。従って航空会社経営からみると債務となり、その運営航空会社が破産した場合は保護されない。実際、アンセット・オーストラリア航空が2001年に経営破綻した際や、エア・ベルリンが2017年に経営破綻した際、両社が運営していたマイレージサービスで取得していたマイルは全て失効になり、何らの救済措置もなかった。 なお、経営破綻し運航停止となった航空会社の搭乗分を提携先の航空会社に対しマイレージを加算する場合については、提携先が指定する日までマイルを加算できる事例がある。。なお、提携先にマイレージを加算した場合、経営破綻し運航停止になった航空会社の搭乗分であっても、提携先の航空会社の規約に基づいて通常通り利用可能である。 経営破綻した場合、アンセット航空やエア・ベルリンの様に最悪の場合マイルが失効してしまうため、顧客の側はマイレージを不必要に貯め込まず、極力こまめに使用するなどの防衛手段を取る以外ない。 イギリスの新聞『エコノミスト』によると、2005年に全世界で未使用マイレージは約14兆マイルであり、平均交換レートが1マイル=約5セントと計算できるため、その総額は約7,000億米ドルと試算できるとしている。 一方、航空会社側からマイルを電子マネーや金券と交換可能なサービスも存在することから、少なくともマイルの提供元である航空会社にとって、マイレージサービスにかかる未履行債務をどのように評価し、財務諸表に計上するかは、財務上の課題となる。通常、会計上は負債に計上され、もし未使用のまま期限切れになり失効した場合は利益になる。 2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ以降、アメリカ大手のユナイテッド航空・ノースウェスト航空(現: デルタ航空)など、多くの航空会社が連邦倒産法第11章を受け入れ、倒産(日本の法律では民事再生法の適用にあたる)。2010年1月には日本航空が民事再生法を申請し、経営破綻した。これらの航空会社では企業再生を行っているが、マイレージサービスについては全面的に保護された。 そもそも高頻度の顧客をつなぎとめるための制度としてマイレージサービスが成立している以上、この債務の解消は、そのまま高頻度顧客の流出に直結しかねないために、経営危機に陥っても簡単には取り消せないという経営上のリスクも存在する。 一方で、マイレージの蓄積を解消するために閑散期にはマイレージの変換レートを引き下げたり、少額からの交換特典を用意し、マイレージの蓄積を減少させる試みを行っている航空会社がある。近年は全日本空輸のように1マイルから利用できる特典を用意したり、日本航空のように自社のマイレージだけではなく、外部企業のポイントサービスへ加算することを選択可能とすることで、早期にマイレージサービスにかかる未履行債務を解消する試みを行っている航空会社も存在する。 日本では、全日本空輸が1ポイント=1円から自社の航空券の購入などに使用できる「ANA SKYコイン」か「ANAショッピング A-style」で利用できる「ANAショッピングポイント」への交換が1マイルから可能な特典を用意したりするなど、少額からマイレージの交換ができる。日本航空ではマイレージのかわりにPonta (ポンタ)を貯めることが選択できるサービスもある。
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