進んだ注意点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/05 07:50 UTC 版)
面積分が、曲面 S の媒介変数表示を用いて定義されることに留意すべきである。与えられた曲面に対して、その媒介変数表示はいくつも考えうる。たとえば、球面上で北極と南極の位置を動かせば、球面上の各点の経度や緯度もそれに伴って変わる。故に、面積分の定義が媒介変数表示の取り方に依存するかどうかと考えるのは自然な疑問である。スカラー場の積分に関しては答えは単純で、どのような媒介変数表示を取っても面積分の値は同一である。 ベクトル場の面積分に対しては、法ベクトルが絡む所為で事態は少し複雑になるが、同じ曲面の二つの媒介変数表示が曲面の各点で同じ向きの法ベクトルを持つならば、いづれの媒介変数表示に関する面積分も同じ値を持つことが証明できる。ところが、それらの法ベクトルが互いに逆の向きを持つならば、一方の媒介変数表示に関して得られる面積分の値は他方に関するものの反数になる。このことから、曲面が与えられたときにはその一意的な媒介変数表示はどれも区別する必要はないが、ベクトル場を積分するときにはより進んで、各点の法線方向を決め、媒介変数表示は一貫した法線方向を持つものを選ばなければならないことがわかる。 もう一つの問題は、曲面全体を覆うことのできる媒介変数表示を持たない曲面が存在することである。そのような例として、(高さが有限な)円柱の表面(側面と上面と底面)として与えられる曲面を挙げることができる。この問題は、曲面をいくつかの小片に分割して、それぞれの小片で面積分を計算し、それらをすべて足し上げることで、すぐに解決できる。これで実際にうまくいくのだが、ベクトル場の積分についてはやはり、分割の各小片での法ベクトルを、再びもとの一つの曲面に戻したときに方向が一貫性を持つように、気をつけて選ぶ必要がある。円柱の例で言えば、側面での法方向を立体の外向きに取ったならば、上面や底面でも同じく立体から外向きに法方向を取らねばならないということである。 そうすると次の問題は、各点の法方向を曲面全体で一貫して入れることができない曲面の存在である(例えば、メビウスの帯)。そのような曲面を小片に分割して各小片上に媒介変数をとり、再度もとのように貼合わせると、別々の小片に由来する法ベクトルの間で辻褄を合わせることができない。つまり、ある二つの小片の間の繋ぎ目で法ベクトルの方向が反対になるのである。このような曲面は向き付け不能であると言う。向き付け不能な曲面の上でベクトル場の積分について記述することはできない。
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