造作買取請求権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 16:46 UTC 版)
借家契約においてもその契約終了時に賃貸人に対して「造作(ぞうさく)」を買い取れと請求できる。これを造作買取請求権という(33条)。建物買取請求権と同様、行使された途端に借家人と賃貸人との間に売買契約が成立するという形成権の一種である。 買取の対象となる「造作」とは、建物に付加された物件で賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的便益を与えるものをいい、賃借人がその建物を特殊な目的に使用するために特に付加した設備は含まれない(最判昭29.3.11)。条文上明示されている畳や建具(障子、襖、戸など仕切りとなるもの)のほか、ガス・水道などの設備、空調設備(エアコン、クーラー)などが挙げられる。この規定は借地借家法においては強行規定ではなく任意規定となったため(37条を参照)、当事者間で自由に特約を定めることができる。 造作は取り外しが可能であるから本来ならば契約終了時に借家人が収去しなければならない。しかし社会全体の生活水準が向上するにつれて空調設備すらもその借家の一部分と見ることもでき、必要費や有益費の規定(民法第608条、詳しくは賃貸借の項目も参照)に従って処理すべきとの考えもある。 賃貸借契約が賃借人の債務不履行ないし背信行為によって解除された場合には、賃借人は造作買取請求権を行使できないとするのが判例の立場である(最判昭31.4.6)。造作買取請求権が行使された場合の建物明渡義務と代金支払義務は同時履行の関係に立たない(建物明渡が先履行、最判昭29.7.22)。
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