近時の裁判例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/28 20:26 UTC 版)
最高裁判所の判例は、登記簿上の取締役であっても善意の第三者に対して取締役としての責任を負うことがあるとしている。しかし、近年の下級審の裁判例では、登記簿上の取締役の責任を認めることに慎重な傾向にある。平成以降の主な裁判例としては以下がある。 取締役として選任されていないにもかかわらず取締役として登記された者について、取締役就任を承諾しておらず、経営に参加したこともなく、裁判になるまで取締役として登記されていることを知らなかったとして責任を否定。また、退任登記が行われなかった者についても、任期をもって退任することを代表取締役に伝えて了承を得ていたにもかかわらず勝手に再任登記されたものであり、不実の登記を残存させることに明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情がないとして責任を否定。(東京地方裁判所1992年(平成4年)1月20日判決、判例タイムズ789号222頁。) 登記簿上の取締役について、株主総会や取締役会の議事録は偽造であり、役員報酬を得たり出資や経営を行っていないなどの事情から判断して、取締役就任を承諾していたとはいえないとして責任を否定。(東京地方裁判所1994年(平成6年)12月21日判決、判例時報1540号117頁。) 役員としての就任承諾が確認された者については名目的取締役に過ぎなかったとする主張を退けて責任を認めた一方で、役員としての就任承諾が確認できなかった者については、不実の登記の出現に明示的・黙示的な承諾を与えたなどの特段の事情がないとして責任を否定。(東京地方裁判所1999年(平成11年)3月26日、判例タイムズ1021号86頁。) 登記簿上の取締役について、裁判になるまで取締役として登記されていることを知らなかったことから、就任登記を承諾して不実の登記の出現に加功したとはいえないとして責任を否定。(東京地方裁判所2010年(平成22年)4月19日判決、判例タイムズ1335号189頁。)
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