転用の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 03:00 UTC 版)
その器官が外見上で小さくなり、退化したものであると見なせるようであっても、それが元来の目的とは異なった用途で用いられている場合がある。 たとえば冒頭で紹介したニシキヘビの痕跡的な後肢は雄が配偶行動に際して雌に対して求愛刺激を与える繁殖器官になっている。また、ハエ目の昆虫は前翅のみが飛行に機能的な羽根の形を取り、後翅は先端が球状に膨らんだごく小さな棒状になっている。これは平均棍(へいきんこん)と呼ばれ、一見飛行の役に立ちそうにないが、ジャイロコンパスと同じ原理で慣性によって飛行中の体の姿勢の変化を敏感に受け取る受容器となっている。そのため、これを切除すると満足に飛行が出来なくなる。 鳥類の場合、前足が翼になっており、それに連動して指が退化している。親指だけが分離し、他の指は骨の形でも互いに癒合して、それらしい姿を残していない。親指も、ツメバケイという例外を除いてはものを掴む、引っ掻けるというような指本来の働きをもたない。しかし、その先端には羽毛がついており、飛行の際には重要な役割を担う。 ヒトの盲腸はごく小さく縮小して、食物繊維を発酵して利用する器官としてはたいした機能を持っていないが、盲腸内のリンパ小節が集中した虫垂と呼ばれる突起を有し、腸内の免疫中枢として無視できない大きな機能を担っている。ただし、腸内のリンパ小節による免疫系の情報処理は生命活動に関わる重要な機能であるため、これ以外のリンパ小節によっても代替が効くようになっており、虫垂を切除しても盲腸-大腸の腸内免疫系は生命活動には支障がない様になっている。
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