赤外線発生のしくみ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 00:56 UTC 版)
赤外線銀河の研究において最も重要なテーマは、赤外線のエネルギー源とそのエネルギーが赤外線として放射されるメカニズムを特定することである。観測される赤外線そのものは分子ガスや星間ダストから発せられていることは確かで、1970年代の初期には、すでに赤外線が星間ダストの熱放射であることが提唱されていた。問題は、分子ガスや星間ダストを暖めるエネルギー源が何なのか、ということである。エネルギー源として考えられているものは2つあり、ひとつはスターバーストとよばれる新しい星の生成過程が盛んに進行している状態である。もうひとつは銀河の中心にある巨大ブラックホール(活動銀河核またはAGN)の働きによるものである。赤外線放射モデルを検討した結果によれば、100 - 200μmの放射は通常の星によって暖められたダストからの放射赤外線であり、赤外線銀河に放射エネルギー強度のピークが見られる60μm付近の放射は、スターバーストにより暖められたダストによるものである。セイファート銀河の高温部などにピークが観察される25μmあたりの放射は、活動銀河核(AGN)が直接ダストを暖めているものによると考えられている。 赤外線光度の低い赤外線銀河の場合は、おもに星生成(スターバースト)がおもな エネルギー源とされている。赤外線光度が大きくなるに従いAGNが存在する割合が大きくなり、超高光度赤外線銀河の場合にはAGNの寄与が大きいと考えられている。これは、多くの超高光度赤外線銀河の場合に、(1) 可視光でAGNの特徴が観測できる、(2) 赤外線放射が核に集中して温度も高い、(3) 星生成過程だけでは放射エネルギーの強さを説明できない、という理由による。 いずれの場合にしても、複数の銀河が接近し、衝突・合体する過程が赤外線の放射と関係していることは確からしい。銀河の分子ガスやダストは通常の状態では、安定した軌道を描いて運動しながら銀河内に分布している。そして、銀河同士が近づくと、その相互作用の影響で分子ガス・ダストがかき乱され、濃度の高いところが生じる。濃度の高い領域では多くの星が生成される。または、軌道を乱された分子ガス・ダストは角運動量を失い銀河の中心に落ち込んで行く。そのため、通常より多くの物質が流れ込むので、スターバーストにしろ、AGNにしろ、銀河中心付近でその活動がより盛んになる。このようにして発生したエネルギーで、銀河の分子ガス・ダストが暖められ、それが赤外線を再放射するのである。
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