記憶の調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 22:21 UTC 版)
扁桃体は記憶固定 (memory consolidation) の調節にも関わっている。学習される出来事の後に、その出来事の長期記憶が即座に形成されるわけではない。むしろその出来事に関する情報は、記憶固定と呼ばれる処理によって長期的な貯蔵庫にゆっくりと同化され、半永久的な状態へと変化し、生涯に渡って保たれる。 記憶固定の際、その記憶には調節 (modulation) が起きる。特に学習される出来事の後の情動の喚起は、その出来事の記憶を強める影響を起こす。学習される出来事の後の情動の喚起が強いほど、その人の持つ出来事の記憶の保持が強化される。マウスが何かを学習した後すぐにストレスホルモンを導入し2日後にテストすると、記憶の保持が強化されているという実験が示されている。 ジェームス・マゴー (James McGaugh) の研究室を含む多くの研究室で示されている通り、扁桃体、特にその基底外側核は出来事の記憶の強化に対する情動の喚起の効果に関係している。この様な研究室では動物に様々な学習課題を訓練し、訓練後の扁桃体への薬物の注射が後の課題の保持に影響を及ぼすことを示している。このような課題には、ラットに弱い電気刺激と実験装置の特定区画との関連付けを学習させる、抑制性回避学習のような基本的な古典的条件づけ課題の他に、水から逃げるようにラットをプラットフォームへと泳がせる、空間または手がかり水迷路課題のようなより複雑な課題がある。もし、扁桃体を活性化するような薬物が扁桃体に注射されれば、動物はその課題の訓練のよりすぐれた記憶を得る。一方、もし扁桃体を不活性化するような薬物が注射されれば、動物の課題における記憶は阻害されるだろう。 扁桃体の損傷によって恐怖条件づけなどに障害は起きるものの、扁桃体が記憶固定の調節に重要であるにも関わらず、扁桃体が無くても学習は成立する。 ヒトにおける研究からの証拠から、扁桃体はヒトでも同様の役割を担っていることが示唆されている。情報を符号化している際の扁桃体の活動量はその情報の保持と相関している。
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