言論の自由とシビリアンコントロール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 17:27 UTC 版)
「田母神論文問題」の記事における「言論の自由とシビリアンコントロール」の解説
田母神本人や自民党の一部の国会議員や雑誌が「自衛官にも言論の自由がある」と主張したが、シビリアンコントロールの上で、「専守防衛」という政府の方針(田母神論文は自衛隊の攻撃的兵器保有の必要性や集団的自衛権行使のための憲法改正の必要性を主張している)に反する主義主張は「叛乱の意思」とみなされかねないものであり、表現の自由も制約される場合もあるとされている。実際に1992年に幹部自衛官がクーデター容認論に基づいた論文を月刊誌『文藝春秋』に発表して懲戒免職になった前例がある。ただし、シビリアンコントロールと一口に言っても、その定義は曖昧で複雑な上、憲法に規定されているものではない。また自衛官が軍人であるか否かについて賛否両論がある。また保守言論誌『Will』2009年2月号が田母神論文を全面的に支持する論陣を張ったが、小林よしのりが「憲法に書かずに文民統制もへったくれもない」と主張したほか、田母神を最優秀に選んだ渡部昇一は「ヒトラーも文民だった」と、文民統制など当てにならないと事実上開き直りとも受け取れる反論をした。 なお田母神は、参考人招致の場で「村山談話の見解と私の論文とは別物だというふうに思っております。」としたが村山談話がどの時点が侵略か述べていないということで、「私は、村山談話の見解と違ったものを書いたとは思っておりません」と述べた。論文のなかでは村山談話の存在については触れていない。ただし、村山談話には「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」という文言があり、侵略を否定する田母神論文と適合するものではない。 また政府が辻元清美衆議院議員の質問主意書に対し提出した答弁書では、論文の応募は「空幕長の職務として行ったものではなく、私人として行ったもの」とした。また、今回の投稿が「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張する」などの政治的目的には当たらず、自衛隊法で制限されている政治的行為にも該当しない」としながらも、「要職にある者は、私人の立場でも公的な立場での意見表明と受け取られるおそれがある」としている。また鈴木宗男衆議院議員の質問に対して提出された答弁書では「(論文では)先の大戦に関して政府認識と明らかに異なる見解が述べられているほか、(集団的自衛権をめぐる)憲法に関する重要な事項について不適切な形で見解を述べている」と指摘。その上で「論文発表は、防衛省・自衛隊への国内外からの信頼を著しく傷つけた」としている。
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