規則的な生活環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/27 09:38 UTC 版)
生物において、生活を行う状態になる体を世代とも呼ぶ。生活環の中で、世代がひとつしかないものもあれば、複数の世代をもつ場合もある。また、世代の変化と、核相の変化が連動する場合と、しない場合がある。 典型的なのは以下の3つである。なお、生活環の型の日本語名には揺れがあり、以下で用いているのとは異なる名前が使われる場合もある。 単相単世代型 (Haplontic) 生活する体は単相で、体細胞分裂によって生殖細胞を作る。接合によって複相の接合子を形成、発生(孵化、発芽)の前に減数分裂が起きる。 緑藻、シャジクモ類、接合藻、黄金色藻、黄緑藻、アピコンプレックス門、渦鞭毛虫の多く、ネコブカビ類、メタモナス類の多く、細胞性粘菌、菌類ではツボカビ、接合菌類や子のう菌類などがこれにあたる。 複相単世代型 (Diplontic) 生活する体は複相で、減数分裂によって生殖細胞を形成する。生殖細胞の接合による接合子はそのまま発生(孵化、発芽)し、元と同じ体を形成する。 大部分の動物、藻類のケイソウ類、褐藻類のヒバマタ目(ホンダワラなど)、オパリナやタイヨウチュウ、ラビリンチュラ、繊毛虫、ヤコウチュウ、メタモナス類の多く、有殻アメーバ、菌類のツボカビ類、他に卵菌類などがこれである。 単複世代交代型 (Haplodiplontic) 2つの体がある型である。単相の体は体細胞分裂によって生殖細胞(配偶子)を作る。配偶子は接合して複相となる。接合子は発生(孵化、発芽)し、複相の体を形成する。複相の体は減数分裂によって生殖細胞を形成し、その生殖細胞は発生(発芽、孵化)によって単相の体に発達する。この場合、核相の変化に伴う世代交代が存在することになり、単相世代を配偶体あるいは有性世代、複相世代を胞子体または無性世代と呼ぶ。2つの世代はほぼ同じ程度に発達するものもあれば、両者の大きさが極端に異なるものもある。種子植物では、配偶体は胞子体の体内に寄生した状態になっている。 シダ植物、コケ植物、種子植物や、緑藻の一部、褐藻類の多く、ハプト藻、有孔虫、粘液胞子虫、変形菌などがこれである。菌類では微胞子虫やツボカビ類の一部(カワリミズカビ)がこれにあたる。 これ以外に、大きな分類群に見られる、特殊な型としては、以下のようなものがある。 紅藻類では、単複世代交代型に近いが、配偶体の上で接合細胞が発芽し、小さいながらも多細胞となり、果胞子というものを形成する。果胞子は発芽して胞子体となる。つまり、2つの世代の間にもう1つの世代が挟まっており、この世代を果胞子体という。 担子菌類では、減数分裂で生じた担子胞子の発芽で菌糸体を生じ、菌糸の接合を行うが、接合の後も核は融合せず、二核共存体として成長する。二核菌糸はそのままで成長を続け、子実体を形成して担子器を形成、そこで初めて融合し、多くの場合にその位置で減数分裂を行ない、担子胞子となる。なお、サビキン類では、寄生生活や季節による宿主の変更を行うものもあり、さらに複雑になっている。 ただし、実際にはそれぞれの世代が独立して生活活動を行うとは限らない。たとえば複相と単相の2つの世代を持つものでも、両方が同等に生活活動をするものはまれで、片方がはるかに小さいもの、あるいは一方が他方に寄生的に生活するもの、あるいはほとんど痕跡的なものもある。たとえば被子植物の花粉(あるいは花粉管)は、配偶体であると見なされているが、実際には細胞は分かれず、その中に花粉管核と精細胞が分化するのみである。これを配偶体という1つの世代であると判断するのは、シダ植物との系統関係に基づくものと言える。独立してそれなりの生活活動を行う体を栄養体と言うこともある。
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