製糸の工程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/08 14:53 UTC 版)
絹 (silk) は様々な種の蚕が天然に産生する繊維である。1700年の時点で好まれたのは Bombyx mori(いわゆるカイコ)が作る絹で、本来はその幼虫が閉じた繭を作るために使うものである。これらの幼虫はイタリア産の桑の葉の上で飼われる。カイコが作る絹の繊維は、幅 5-10μm で角が丸い三角形の横断面を持つ。この繊維はフィブロインという蛋白質からなり、セリシンというゴム状の蛋白質によって繭に固められる。繭は採取されたあと、繰湯をくぐらせることによってゴムが溶かされ、一本の糸として綛(かせ)に巻き取られる。綛はまとめて梱包され、工場に運ばれた後で大まかに次のような工程を経る。 ソーキング (soaking) - 綛を水に漬ける。 繰返し (winding) - 綛を乾かして生糸を引き出しながらボビン(筒型の糸巻)へ巻き取る。 引揃、合糸 (doubling) - ボビンから引き出した糸を揃えて並べる。 加撚、撚糸 (twisting) - それらを一束にまとめ、撚りを加えて一本の絹糸にする。 撚糸工程を指してスローイング (throwing) と呼ぶこともあるが、話し言葉ではソーキング以降の工程全体を指して広義にスローイングと呼ぶこともある。絹糸は撚りの強さに応じて 3 種類に分けられる。緯糸(横糸)に適した「ノー・ツイスト」(撚り無し)、取り回しし易いよう僅かに撚りをつけた「トラム」、さらに撚りを強くし経糸(縦糸)に適した「オルガンジン」の 3 つである。 1700年時点では、イタリア人の撚糸工(よりいとこう)はヨーロッパで最も熟練した技術を持ち、また繰返し工程に使うフィラトヨ、合撚糸工程に使うトルチトヨという 2 種類の機械を開発した。1487年に描かれた、人力の回転式繰返し機の絵には 32 本のつむ(紡錘)がつけられている。外部からの動力で動かしたフィラトヨの最初の記録は13世紀から見られ、最も古い絵としては1500年頃のものがある。 フィラトヨとトルチトヨには、中心軸に沿って交互に回転する円形の枠が組み込まれていた。その互いの回転速度によって、撚りの強さが決まった。絹は温度と湿度が高くなければ、これらの工程で上手く取り回せない。イタリアでは日光が温度を上昇させたが、ダービーでは工場に暖房を用意し、その熱をまんべんなく送る必要があった。
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