表現の選択
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 10:02 UTC 版)
会話分析で扱われるもう一つの研究領域に、表現の選択の問題がある。これは、会話の参与者が会話中において、人や場所、時間などをどのように表現しているかという問題を扱う。 例えば、ある場所を表現するのに、様々な言い方がある中から、話者は特定の言い方を選択している。同じ場所でも、「渋谷駅ハチ公前」と言うこともできるし、「東京都渋谷区道玄坂2-1」と言うこともできる。後者の表現のほうがある意味ではより「正確」だが、しかし待ち合わせをするときには後者の表現は役に立たない。また、会話の相手がよく待ち合わせをする相手であれば、「いつものところ」と言ったりするだろう。つまり、どのような言い方がふさわしいかは、誰に対してどのような活動の中で場所が指示されるかに依存している。これは「場所」だけでなく、「人」や「時間」や「行為」についても同様である。逆に言えば、話者がどのような表現を用いているかによって、どのような活動へと話者が指向しているか、聞き手とのあいだにいかなる共有知識があると理解しているかを分析できるのである。 さらに、人(第三者)については、会話中で言及する際には、1)最小限の言い方で、2)また相手が分かるように配慮された言い方(言い換えれば、聞き手にとって最も認識可能な言い方)が優先されるということが既に示されている。この優先構造に対し、名前の使用は最も適しているため、会話中、聞き手にとって言及対象が認識可能であることが想定出来る場合は、名前が頻繁に使用される。たとえば、共通の友人について会話中で言及する時、私たちは、「Aちゃん」という名前を利用し、名前以外のその人を表せる言い方(「B社で働く友だち」、「最近結婚した共通の友だち」など)はそもそも何か特別の理由がない限り、使用しないということである。
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