面の選択
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/14 20:28 UTC 版)
同じ曲目・役柄であっても、流儀によって面の使用に対する好みがある。若い女性面では、金春流と喜多流は「小面(こおもて)」を最も尊重するのに対し、宝生流は「節木増(ふしきぞう)」、観世流は「若女」、金剛流は「孫次郎」を流儀の代表面としている。また、同じ小面でも、金春流は無垢な表情のものを好むが、金剛流はわずかに官能的な表情のもの、観世流は肉感的な表情のものを好むといった違いも生じ得る。同じ範疇の面であっても、「位(くらい)」の差があり、演者の経験や技量によって、位の高い面を着ける資格を有するかが決せられる。役柄に対する解釈や趣向によっても、どのような位の面を用いるかが変わる。 同じ観世流の『熊野』や『松風』でも、面には「若女」「深井」「小面」といった選択肢があるが、「若女」や「小面」を着ける場合、装束は紅を中心とした華やかな紅入(いろいり)のものになるのに対し、「深井」を着ける場合には、装束は地味な色調の紅無(いろなし)となるなど、面の選択が、装束だけでなく、演出や表現の選択にもつながるため、重要な要素となる。 なお、上述の若い女性面のように、いくつかの面種の間で一定の互換性があり、その範囲内で面を選択する場合がある一方、天狗物の能は「大癋見」がなければ上演できないとか、大口をはく脇能の老人には「小尉(小牛尉)」が必要であり「阿瘤尉」で代替することはできない、といった決まりごともある。 小書などの演出によっても、面の選択が変わってくる。
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