衛星と環の系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 02:28 UTC 版)
衛星の進化は潮汐力によって引き起こされる。衛星は、主に惑星の直径に沿った重力の差によって周りを回る物に潮汐作用を及ぼす。衛星が惑星の自転と同じ方向に公転し、惑星の自転周期が衛星の公転周期よりも早い場合は、潮汐作用は常に衛星の方向に引っ張られるように働く。この場合、惑星の自転の角モーメントが衛星に転移する。衛星はエネルギーを得て外側の軌道に移動し、惑星の自転速度は時間とともに遅くなる。 地球と月はこの構造の一つの例で、地球人に最も身近な例でもある。自転と公転の同期の進行により、現在、月については自転が公転に一致して、月は常に地球に同じ面だけを見せている。また一方では進行中の現象として、月は地球から遠ざかり続けており、同時に地球の自転は徐々に遅くなっている。同様の例は、木星のガリレオ衛星や土星の大きな衛星でも見られる。 衛星の公転速度が惑星の自転速度より速かったり、惑星の自転速度と反対方向に公転している場合は、別のシナリオが考えられる。このような場合には、潮汐作用によって衛星の公転速度は遅くなる。前者の場合には、角モーメントの方向が保存され、衛星の軌道が近づいて惑星の自転速度は速くなる。後者の場合には、惑星と衛星の角モーメントは逆になり、転移によって双方のモーメントの大きさが小さくなる。どちらの場合でも、潮汐力で引き千切られるまで惑星に近付き、粉々になって惑星の環になったり、惑星に衝突したりする。3000万年から5000万年以内に火星の衛星フォボス、36億年以内に海王星の衛星トリトンがこのような運命になるとされ、他にも木星の衛星メティスとアドラステアや天王星および海王星の少なくとも16個の小衛星も同様だと考えられている。天王星の衛星デスデモナは、隣の衛星に衝突すると考えられている。 3つ目の可能性は、惑星と衛星の自転と公転の同期が起こっている場合である。この場合は潮汐作用が直接衛星に影響し、角モーメントの転移は起こらず、軌道周期も変わることはない。冥王星とカロンはこのようなケースの例である。 2004年に探査機カッシーニが土星の環に到達するまでは、土星の環は太陽系の年齢よりもずっと若く、30億年以上前からあったとは考えられていなかった。土星の衛星との重力相互作用によって、環の外側は惑星の方に向かっていると考えられたが、カッシーニの観測データによってこの考えは覆された。観測により、10km幅の氷塊が繰り返し破壊、再生され、環には常に新しい物質が供給されていることが分かった。土星の環は他の木星型惑星の環よりも大きく、45億年前に惑星ができた時から存在したと考えられている。
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