蔑称にまつわる騒動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/30 21:05 UTC 版)
トルコにおいてクズルバシュ(直訳すると赤い頭)という単語は、アレヴィー派に対する最大の侮辱であり、中傷であると見なされている。トルコ国外では「クズルバシュ」は単なる歴史用語以上の意味はなく、またトルコ語の辞典でこの言葉は「シーア派の一集団の構成員に与えられた名前」としか記されていないが、トルコ社会ではこの言葉が何を意味しているのかは公然の秘密であり、不用意かつ不適当な場面でこの言葉を用いた際には、殺傷事件にまで発展しかねない宗教上のタブー用語であることを、トルコ人なら誰もが知っているという。 1995年1月にギュンレル・ウミットという司会者が、あるゲーム番組で妊娠している素人の女性と冗談を言い合っていた際に、その女性が「お腹の子の父親があなたでないとしたら、私の父親かしら」と発言したことを受けて、「お前さんはクズルバシュなんだね、多分」と言い返した。その直後、ウミットは失言を取り消して謝罪したものの、この失言はアレヴィー派に多大な反発を引き起こすこととなった。この番組を放映したテレビ局には数千名のアレヴィー派が抗議に押し寄せて、一部は暴徒化するなど治安部隊と衝突する事態にまで発展した。一方、アレヴィー派によれば、この時アレヴィー派ではない何者かがテレビ局に火を放とうとしたが、アレヴィー派がそれを阻んだという。さらに、ウミットに何かあってはならないと、自分たちを侮辱したウミットを守るため護衛にさえ付いたとも語った。なお、この事件が2ヵ月後にイスタンブールで起こった宗派対立に起因するアレヴィー派と警察や治安部隊との大規模な衝突事件の伏線になったとも言われている。 その後、2010年にはタレントのメフメト・アリ・エルビルが司会を務めていた「チャルクフェレキ」という番組で、アレヴィー派に対して「ろうそくの火(アレヴの字義は炎)が消えたって?ここで消しているんだよ」と失言した。エルビルは以前にも「僕がクズルバシュだって、そんなばかな?」と発言したこともあった。番組を放映したスターテレビは、「チャルクフェレキ」の放映を中止することを発表するとともに、エルビルも謝罪の意を述べたものの、アレヴィー派から多大な反発を受けて抗議活動が展開されることになった。
※この「蔑称にまつわる騒動」の解説は、「アレヴィー派」の解説の一部です。
「蔑称にまつわる騒動」を含む「アレヴィー派」の記事については、「アレヴィー派」の概要を参照ください。
- 蔑称にまつわる騒動のページへのリンク