苦難の儀礼
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/07 01:30 UTC 版)
詳細についてはシャーマニズムおよび占いを参照。 人類学者ヴィクター・ターナーの定義によれば、苦難の儀礼とは人間に不幸をもたらす霊を鎮める行為である。これらの儀礼には霊による占い(託宣を求めること)が含まれるばあいもあり、これによって原因が確定され、また癒し、浄化、悪魔払い、守護などのためにどの儀礼を行うかが確定される。経験される不幸としては個人的な健康の他に、旱魃や昆虫禍などのような広義の気候に関連した問題もある。シャーマンによって行われる癒しの儀礼では、不幸の原因が社会的な不調として特定される場合も多く、社会的関係の改善によって癒しが行われることもある。ターナーは北西ザンビアのンデンブ族の間で行われるイソマ儀礼を例として挙げている。イソマ儀礼は不妊のため子供に恵まれない女性を癒す儀礼である。不妊は「母系的出自システムと父系居住の婚姻システムとの構造的緊張」の結果である。(すなわち、女性は自分の母親の一族に忠誠の義務をもっているが、彼女が居住しているのは彼女の夫の一族の下であるため、彼女は両者の間の緊張を感じている。)「女性が『男の側』に近づきすぎると、彼女の死んだ母方の親族が彼女の繁殖力を害するのである。」母系の出自と婚姻とのバランスを正すために、イソマ儀礼では女性を彼女の母系親族の下に住ませ、死者の霊を宥めるのである。 シャーマン的儀礼およびその他の儀礼は精神医療的な効果をもたらすこともあり、ジェーン・アトキンソンのような人類学者はこの過程を理論化した。アトキンソンによれば、個人に対するシャーマン的儀礼の効果はシャーマンの力を認めている儀礼参加者たちに依存しており、このためシャーマンは患者を癒すことよりも観衆を引きつけることのほうに重きをおく傾向がある。
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