船舶用軸受材
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 07:56 UTC 版)
リグナムバイタは特に船のプロペラシャフトの船尾管軸受け用材としてもっともよく知られている。リグナムバイタが軸受として使用されたのは19世紀半ばからである。イギリスの造船技師であったJohn Pennは、1854年にリグナムバイタの軸受に関する特許を取得した。当時のスクリュー船はスクリューギアの過熱や損傷に悩まされ、船尾管の騒音は大きく、船尾管の破損による軸の破損や分裂などの危険にさらされていた。この困難のために、一時はスクリュー船が放棄され、外輪船が復活するようにも見えた。Pennは、各種の金属や木材で試験をして、リグナムバイタを軸受けとして採用した 。 リグナムバイタ軸受を最初に使用したのはイギリス海軍のスループ「HMS マラッカ」(後に日本海軍に売却されて筑波になった)であった。マラッカはそれまでに、外部スクリューシャフトのベアリングが摩耗し、メタルが一時間に3.5オンスも磨り減ってしまうという深刻なトラブルを抱えていた。リグナムバイタの軸受に換装した後は15000マイルの航海の後に、32分の1インチだけしか磨り減りは見付からなかった。この成功によりスクリュープロペラの実用性が完全に確立した 。 リグナムバイタを使用した海水潤滑軸受は船尾管軸受としてもっとも一般的なものであったが、1959年頃からフェノール樹脂の軸受が使われはじめ、すでに1959年以降の新造船ではゴム軸受けがリグナムバイタ軸受けを上回っていた。リグナムバイタは入手困難になり、材質のむらもあるため使用が減っている 。その後はほとんど、合成ゴム、また大型船ではホワイトメタルを使用した油潤滑軸受が使われるようになった 。 リグナムバイタ製の軸受は、小型船では材をくりぬいて一体型の軸受けとするが、大型船ではいくつかのピースに分割して使用する。分割使用の場合、上半分は板目材、下半分は小口材を使用する 。使用時には含有する樹脂成分が摩擦熱の影響を受けやすいので、注水の必要があり、軸受面には水を通すためのU字または V字型の溝がある 。1964年に行われたリグナムバイタの耐摩性と耐用機関についての調査によれば、リグナムバイタ軸受の平均耐用年数は、貨物船とタンカーでは大差があり、貨物船で45.6ヶ月、タンカーでは27.2ヶ月であった。
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