臨床開発と承認
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2009年12月22日、米国食品医薬品局(FDA)に対してロルカセリンの新薬承認申請が行われた。2010年9月16日、FDAの諮問委員会は、有効性と安全性の両面において懸念があるとし、特にラットにおける腫瘍の発見を理由に、9対5で承認に反対した。2010年10月23日、FDAは、入手可能なデータに基づいて本剤を承認しない事を決定した。これは、発癌性が否定出来ないだけでなく、体重減少効果が僅かであると判断された為である。 2012年5月10日、アリーナ社が提出した新たな試験の結果、FDAの委員会は、一定の制限と患者モニタリングを伴うロルカセリンの推奨を決議した。その制限内容は、BMI(体格指数)が30以上の患者、またはBMIが27以上で高血圧や2型糖尿病などの合併症を持つ患者としている。2012年6月27日にFDAは、BMIが30以上(肥満)の成人、またはBMIが27以上(過体重)の成人で、高血圧、2型糖尿病、高コレステロール(脂質異常症)などの体重に関連する疾患を少なくとも1つ有する患者に対して、ロルカセリンの使用を承認した。 ロルカセリンの安全性と有効性は、2型糖尿病の有無に拘らず、約8,000人の肥満症および過体重の患者を対象とした3つの無作為化プラセボ対照試験で評価され、52週間から104週間の治療が行われた。参加者全員が、カロリーを抑えた食事と運動のカウンセリングからなる生活習慣改善指導を受けた。プラセボと比較して、ロルカセリンを最長1年間投与した結果、平均3%から3.7%の体重減少が認められた。 2型糖尿病ではない患者のロルカセリン投与群で約47%が体重を5%以上減少させたのに対し、プラセボ投与群では約23%であった。2型糖尿病患者では、ロルカセリン投与群では約38%、プラセボ投与群では約16%の患者が、少なくとも5%の体重減少を示した。また、2型糖尿病患者において、ロルカセリンの投与は血糖コントロールの良好な変化を齎した。ロルカセリンの承認された添付文書では、12週間の投与で体重が5%減少しなかった患者については、治療を継続しても臨床的に意味のある体重減少が得られない可能性が高いため、本剤の投与を中止する事が推奨されている。 本剤の製造業者は、心筋梗塞や脳卒中などの主要有害心疾患イベントのリスクに対するロルカセリンの効果を評価するための長期心血管アウトカム試験を含む6つの市販後臨床試験の実施を求められていた。 2016年7月15日、米国において、ロルカセリンの徐放性製剤の使用が承認された。 2020年2月、FDAは製造元に対し、安全性に関する臨床試験で癌の発生が増加した事を理由に、本剤の米国市場からの自主的な撤退を要請した。本剤の製造元であるエーザイは、本剤の自主的な撤退を要請する文書を提出した。
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