臓器ドナーとなりうる動物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 21:20 UTC 版)
「異種移植」の記事における「臓器ドナーとなりうる動物」の解説
霊長類の中でもヒトに近縁な生物がヒトへの異種移植の臓器ドナーとして最初に考えられた。チンパンジーはもともと臓器のサイズがヒトと同じサイズであり、ヒトとの血液型適合性も良好で、異種移植の候補として最良と考えられていた。しかし、チンパンジーは絶滅の危機に瀕している種であり、他のドナーが求められた。ヒヒはより容易に入手できるが、ドナーとしては実用的ではない。身体のサイズが小さいこと、血液型O(普遍的なドナーとなりうる)の割合が低いこと、長い妊娠期間、出産数の少なさなどの問題がある。さらに霊長類からの移植に関する主な問題は、ヒトへの病気感染のリスクがあることである。 ブタは現在、臓器提供のための最良の候補であると考えられている。ヒトとの系統学的距離が遠いことから、異種間の疾病の伝播のリスクは減少する。またブタは容易に入手可能であり、その臓器は解剖学的にほぼヒトと同じサイズである。長い世代にわたって家畜としてブタはヒトと密接に接触しているため、未知の疾患がある可能性も低い。異種移植における現在の実験は、ドナーとしてブタを、ヒトモデルとしてヒヒを使用することが最も多い。2022年1月8日、メリーランド大学で世界初となる遺伝子操作されたブタの心臓をヒトに移植する手術に成功した。 再生医療の分野では、胚盤胞補完法 (blastocyst complementation) とよばれる手法が検討されている。それは、膵臓形成不能のブタの胚、あるいは腎臓形成不能のブタの胚など、特定の臓器を形成できない胚を利用する。ほかの動物の幹細胞をその胚に入れることで、発生途中で、欠損する臓器をその動物の幹細胞が補完しようとする性質を使い、異種の多能性幹細胞から機能をもつ臓器を、インビボで、生成しようと試みられている。胚盤胞補完法の研究は、現在は基礎研究の段階である。近い将来、末期の臓器不全の人のQOLを向上させるために、畜産動物を使用し患者自身の細胞から移植可能なヒト臓器を生成することができるようになっているかもしれない。
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