育成と普及の経過
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 14:45 UTC 版)
北海道立上川農業試験場(現・北海道立総合研究機構農業研究本部上川農業試験場)で育成された。旭川市永山の同試験場跡には2013年(平成25年)、きらら397の記念碑が建てられた。 1980年(昭和55年)に始まった北海道における「優良米の早期開発試験」事業の中で研究が行われた。1980年(昭和55年)に試験交配が着手され、1982年(昭和57年)以降に数度の系統選抜を経て、奨励品種決定調査へと進んだ。「上育(じょういく)397号」の系統番号で試験され、1988年(昭和63年)1月の会議で出席者の全員一致により北海道の奨励品種(優良品種)となった。 名称の「きらら」は一般公募により、きらめく様子・白い米のイメージから選ばれた。マスコットキャラクターとして、絵本作家の伊藤正道がデザインした「きららちゃん」が設定されている。若手女性を交えた選考委員16人のうち9人が賛成し、「これが米の名前か」という農業団体幹部の反対論を押し切った。 交配の組み合せは、母が「渡育214号」(後の「しまひかり」)、父が「道北36号」(後の「キタアケ」)である。「しまひかり」は「コシヒカリ」の血を引く良味品種であったが、北海道で栽培するには耐冷性に問題があった。他方の「キタアケ」は早生種で、耐冷性に優れて多収量だったが、食味に劣り、典型的な従来の北海道米の性格を有していた。いずれの品種も1980年(昭和55年)当時は奨励品種決定前の開発段階であった。なお、開発初期の段階では、良食味かつ耐冷性の新鋭と言われていた「ゆきひかり」(当時は開発段階)と「しまひかり」の組み合わせの方が有望視されていた。 かつて北海道産米は、食味の悪さから「鳥またぎ」「猫またぎ」、それにより在庫が減りにくいことで「やっかいどう米」と揶揄された。きらら397はそうした評価を一新させ、1989年(平成元年)から作付けが始まると、それまで北海道米のエース的存在だった「ゆきひかり」に取って代わり、道内で最大の作付面積を誇る品種に成長した。1996年(平成8年)の全国的な米余りに際しては一時的に販売不振となったが、ホクレン農業協同組合連合会主導による外食産業向けの販路拡大などで再び活況を取り戻している。 北海道産の良味品種としては、その後に開発された北海道産の良食味米「ほしのゆめ」及び「ななつぼし」の先駆けといえる。なお、「きらら397」の培養変異である「札系96118」と「上育427号」(「ほしたろう」)を交配させた「ゆめぴりか」も、2008年(平成20年)に北海道の優良品種として採用されている。 2018年(平成30年)時点の道内における作付面積は9,752 ヘクタールで、シェアでは「ななつぼし」「ゆめぴりか」に次ぐ第3位。
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