美的な価値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 02:56 UTC 版)
プロブレムは単に問題を解くだけではなく、芸術作品として鑑賞できなくてはならない。この点は特定のテーマをもっとも効率よく表現するという特徴と不可分である。ただしプロブレムの美醜を区別する公式の基準はない。判断基準は人によるし、また時代によっても変化するためである。現代においては、美しいプロブレムの重要な要素として一般的に以下の条件が認められている。 プロブレムの局面は合法でなくてはならない。つまり、初形から合法手を続けて生じる局面であることが必要。そのための手順が実戦的な意味での大悪手を含んでいても、作品のキズとは見なされない。 プロブレムの初手(key move あるいは キーと呼ばれる)は唯一でなくてはならない。解答条件を満たす初手が複数あるものは「別解がある(cooked)」と言われ、不完全作として専門雑誌等には掲載されないはずである。例外は、テーマ上関連のある複数のキーを意図して作られたプロブレムである。この種のプロブレムは特にヘルプメイトに多い。 直接メイト問題においては、理想的にはどの黒の応手に対しても白の指し手は1つでなくてはならない。最初の手(キー)以外で白の指し手に選択肢があるものはデュアルと呼ばれる。キーが複数ある場合とは違って、デュアルはそのプロブレムに他の面で魅力が大きければ許容されることも多い。 解は手あたり次第の読みによって出てくるものではなく、なんらかのテーマに沿って説明できるものでなくてはならない。よく用いられるテーマには独特の名称がついている(一部は用語の項に挙げた)。 解の初手(キー)は自明なものであってはならない。たとえばチェック、駒取り、直接メイトにおいて黒キングの動きを狭める手などは悪いキーとされる。黒キングの逃げ道のひとつをふさぐ手でも、逃げ道の総数を減らさないキーは認められる。また、黒からのチェックを防ぐキーも特に嫌われる。一般的に言って、実戦における得な手から遠いほど、意外性のあるよいキーということになる。 問題図にはポーンの昇格によって生じた駒があってはならない。 盤上の駒は例外なく、作意解を成立させるためか、別解を排除するために役立っていなくてはならない。解答者の注意をそらすための余分な駒(飾り駒)を加えてはならない(まれに、それがテーマに貢献している場合は認められることがある)。またそのテーマがより少ない駒数で表現できるのなら、そうすべきである。 プロブレムは手の効率を見せなくてはならない。テーマは実現可能な最短手数で見せることが望ましい。この点は、詰将棋や詰碁とは異なるところである。詰将棋や詰碁の趣向作では、テーマを最大限に繰り返して長手数作品に仕上げることがよく行われるからである。
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