組成と組織
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 05:34 UTC 版)
「オーステナイト系ステンレス鋼」の記事における「組成と組織」の解説
オーステナイト系ステンレス鋼とは、常温での金属組織がオーステナイトとなるステンレス鋼である。ステンレス鋼とはクロムを 10.5%(質量パーセント濃度)含む合金鋼で、含有されるクロムによってステンレス鋼の耐食性が実現される。純鉄では、金属組織がオーステナイト(γ鉄)となるのは高温状態のみで、常温ではフェライト組織(α鉄)である。純鉄にクロムを加えることにより、オーステナイトが安定的に存在する最低温度は約 830 ℃ まで広がる。しかし、クロム含有量が約 7% を超えると、オーステナイトが存在する温度領域は逆に小さくなり、クロム含有増加に伴って最終的にはオーステナイトの存在領域は消滅する。一方、ニッケルを純鉄に加えると、オーステナイトが存在する温度領域は大きく広がり、オーステナイトが安定的に存在する最低温度はニッケル 30% では約 500 ℃ まで広がる。 ニッケルのようなオーステナイトの存在範囲を広げる元素をオーステナイト生成元素と呼び、クロムのようなフェライトの存在領域を広げる元素をフェライト生成元素と呼ぶ。オーステナイト系は、クロムの他にオーステナイト生成元素のニッケルを主成分として含むため、クロム・ニッケル系ステンレス鋼(Cr-Ni系ステンレス鋼)に分類される。オーステナイト系の標準鋼種として挙げられるのがクロム約 18%、ニッケル約 8% を含むものである。これはJIS規定の鋼種では SUS304 や SUS302 に相当し、18Cr-8Niステンレス鋼、18-8ステンレス鋼、18Cr‐8Ni系としても知られる。 工業規格に規定されているオーステナイト系標準鋼の組成の例を、以下の表に示す。 オーステナイト系標準鋼の組成例規格材料記号CMnPSSiCrNiNISO X5CrNi18-10 0.07以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 1.00以下 17.5–19.5 8.0–10.5 0.11以下 EN 1.4301 0.07以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 1.00以下 17.0–19.5 8.0–10.5 0.11以下 ASTM 304(S30400) 0.08以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 0.75以下 17.5–19.5 8.0–10.5 0.10以下 JIS SUS304 0.08以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 1.00以下 18.00–20.00 8.00–10.50 - ステンレス鋼の組織は、フェライト生成元素とオーステナイト生成元素のバランスと、加える熱処理などによる熱履歴で決まる。オーステナイト系はオーステナイト生成元素を含むため、オーステナイトが常温で存在できる。 よく使われてる18Cr-8Niステンレス鋼の場合、厳密には高温状態でもオーステナイト単相ではない。シェフラーの組織図によれば、フェライトが約 5–10% 存在するオーステナイトとフェライトの二相組織となっている。しかし、炭素や窒素などのその他のオーステナイト生成元素の作用により、常温ではオーステナイト単相となる。他のオーステナイト系鋼種も高温ではフェライトをいくらか含み、添加元素を増やした鋼種で高温でもオーステナイト単相となる。
※この「組成と組織」の解説は、「オーステナイト系ステンレス鋼」の解説の一部です。
「組成と組織」を含む「オーステナイト系ステンレス鋼」の記事については、「オーステナイト系ステンレス鋼」の概要を参照ください。
- 組成と組織のページへのリンク