だいいちげんり‐けいさん【第一原理計算】
第一原理計算
量子力学の原理に基づいて電子の質量、電荷やクーロン力など基本物理量から物性量を直接に導く計算のこと。言いかえると、実験値に合わせるためのパラメータの導入や安易なモデル化などをせず、基本原理から直接物性量を導き出す計算。電子間,原子核間,および電子-原子核間のクーロン相互作用から出発し,物質の性質(主として電子状態)を非経験的に計算する。計算機の性能の向上と低価格化に伴って、より多くの原子を含む系についての計算が安価にかつ迅速に行うことができるようになり、急速に普及しつつある。新物質の物性の予測または既存物質の物性の理解や予測する手段として欠くことのできない研究手法となっている。TEMの分野では物質の状態密度を反映するEELSスペクトルの微細構造の理解に用いられている。
第一原理計算
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/03 22:28 UTC 版)
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第一原理計算(だいいちげんりけいさん、英: first-principles calculation、ab initio calculation)とは第一原理に基づいて行われる計算(手法)の総称である。
第一原理計算(手法別)
- バンド計算(→第一原理バンド計算)
- 量子化学的手法(→計算化学)、DV-Xα法
- 第一原理的手法 (原子核物理学)
第一原理計算(バンド計算に関して)の現状
いわゆる第一原理による電子状態計算手法によって扱える原子の数は2003年現在でも100~1000個程度までであり、アボガドロ定数に遠く及ばない。1000原子のオーダーでようやく最も簡単な構造のたんぱく質(或いはアミノ酸)が扱えるかもしれないというレベルである。
実際に計算で扱う時間の問題も存在する。第一原理分子動力学法で扱える時間は、最大でも数ピコから数十ピコ秒程度の分子動力学しか扱えない。実時間での1秒間を実際に計算の上で再現させることは現実問題として不可能に近い。更に、電子状態を解くために用いる近似手法(密度汎関数法、局所密度近似、一電子近似、断熱近似等)は、現実の化学反応を正確には記述できているとは言い難く、ましてや生体内の代謝反応やDNAの複製過程、植物の光合成のような大規模で複雑な反応を第一原理計算だけで再現することは著しく困難と言わざるを得ない。
そのため、こうした困難を乗り越えるための努力が行われている。オーダーN法や、ハイブリッド法は、1000原子より一桁以上大きなサイズの系を扱えるようにすることを目標としており、それを可能としつつある。ただ、方法論として未だ発展途上で、精度に関しての十分な検証が必要である。一方、現実の化学反応等をより精度良く記述するために、断熱近似を越えるような試みや局所密度近似を越える試みなどがなされている。光化学反応などでは、電子励起状態が関与する。こうした現象を密度汎関数法の枠内で取り扱うため、時間依存を含めた形式(TDDFT)も展開されている。
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