竪窯(シャフトキルン)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/22 00:42 UTC 版)
この化学反応に理論上必要な熱(標準エンタルピー)は、生石灰1kgあたり3.15MJ程度である。したがって不連続窯の効率は約20%しかない。効率を高めるには連続窯を開発し、不連続窯で必要となる加熱と冷却による熱の浪費を防ぐ必要があった。最初の連続石灰窯は、高炉とよく似た構造の単純な竪窯(シャフトキルン)だった。当初の竪窯は対向流 (counter-current) 式と呼ばれる方式で、その後「再生 (regenerative) 式」や「環状 (annular) 式」が考案された。生産量は1日あたりおおよそ100トンから500トンである。 対向流式 竪窯の中間あたりに燃料を注入し、その部分が最高温度になる。窯の一番上から原料を投入すると、まず乾燥され、次いで800℃程度まで熱せられ、二酸化炭素除去作用が始まり、温度の上昇と共に反応が速くなっていく。バーナーより下では、下からの空気で熱い石灰を冷やし、空気に熱を移す。底の部分に機械式火格子があり、生石灰をそこから回収する。ファンを使って窯の中のガスを排気する。窯の中の石灰石は上にあるエアロックから供給し、常に一定の量が窯内にあるように調整する。不連続窯と同様、常に下から上に空気が流れるようにするため、原料はある程度の大きさの塊でなければならない。焼き具合は底から生石灰を回収する速さで調整可能である。必要な熱は4MJ/kgまで低下させることもできる。 再生式 この場合2つの竪窯を中間あたりで連結して一組にし、交互に運用する。一方の竪窯の上から空気と燃料を入れて点火し、連結部分を通してもう一方の竪窯の上から排気する。この流れを一定間隔で反転させる(一般に1時間あたり5回から10回)。こうすることで比較的低い温度(約950℃)を保った部分が多くなり、生石灰の品質向上に理想的な環境となる。 環状式 この場合、竪窯の内部に同心円状の円筒があり、断面はドーナツのようになっている。この円筒は下が開いていて、冷却部の予熱された空気をそこで集め、ドーナツ状の部分にその空気を加圧して送り込むようになっている。すると空気はそこから上と下の両方に流れるようになる。これも比較的低い温度の部分を多くする工夫である。
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