社会的エンリッチメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 00:27 UTC 版)
「環境エンリッチメント」の記事における「社会的エンリッチメント」の解説
他の動物との関わりに着目したエンリッチメントである。ヒトや同種個体、混合飼育の場合には他種の動物との関係も、社会的エンリッチメントになりうる。ヒトとの関わりをここに含めず、別のカテゴリに入れることもある。 同種個体の存在は、飼育動物のエンリッチメントにおいてもっとも重要なものの1つである。野生の群れ構成に近づけることが望ましい。たとえばトラは単独の場合よりもペアで飼育したほうが行動が多様化する。社会的飼育の重要性は、とくに実験動物において強く指摘されており、極小のケージのような環境ですら、その効果は大きいと考えられている。ただし現実には実行が難しいことも多い。また同種個体と一緒に飼育すると争いやストレス、けが、病気などの原因となる可能性もあり、飼育管理体制の配慮も必要とされる。鏡やビデオを用いたり、物理的な接触をさせずに他個体の姿を見せたりといった代替手法も可能である。動物の種や時期によっては、単独飼育がむしろ好ましいこともある。 飼育動物がもっともよく関わるヒトは飼育員である。動物は飼育員に恐怖や不信を抱くこともあるが、とくに単独または少数で飼育される動物にとっては、ヒトとの関わりがエンリッチメントにもなり、その関係は複雑である。檻やガラス越しでも、飼育員との豊かな心理的交流は可能である。北米の複数の動物園で行われた研究によれば、飼育員が直接に飼育場に入るよりも、壁ごしに関わるほうがよい関係になりやすいという。 オペラント条件付けによるハズバンダリートレーニングも、他の利点に加えてエンリッチメントとしての効果を持つと考えられることがある。罰による強制の伴う訓練と異なり、オペラント条件付けによるトレーニングでは動物を身体的・心理的に傷付けることはないとされ、さらに飼育員との交流によって心理学的幸福にも貢献すると考えられる。しかしトレーニングとエンリッチメントは、動物に刺激を与えて行動を発現する機会を与えるという共通点を持つが、両者を比較した研究によればその効果には違いが大きく、トレーニングがエンリッチメントになるかどうかははっきりしないという指摘もされている。 飼育員のほかに、動物を観察する研究者や、動物園の観客も、動物にとっての刺激になる。観客はエンリッチメントにもストレスの元にもなりうるが、ストレスを与える効果が大きいとする研究が多い。
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