社会と「雑菌」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/23 22:43 UTC 版)
近年、日本ではやや神経質な程に、これら雑菌を恐れる傾向が見られる。特に1990年以降では強迫神経症(または恐怖症)によって、従来から見られた潔癖症とは全く異なる、不潔である事に恐怖心すら抱く人が増える傾向にある。これらの人々では、電車のつり革に触れなかったり、公共の装置(自動販売機など)のボタンが操作できなかったりといった傾向も見られ、重度の人に在っては、外出もままならなくなる程に恐怖心を抱く人もある。 元々人間には、人間社会において存在する諸々の細菌や菌類に対して、免疫によって一定の抵抗力があるが、極端に雑菌を恐れる人は、日常生活においても支障を来たすケースも見られる。他方、文具メーカーや日用品メーカーは、殺菌・抗菌グッズを多数販売し、これら社会不安を煽る傾向すら見られる。広告などにおいて、細菌の顕微鏡写真をテレビの画面いっぱいに映し出した上で自社製品の殺菌力を謳う物も見られる。これらの広告に嫌悪感を抱く人も少なからずあり、1990年代後半から日本国内の抗菌グッズ市場は300億円市場にまで成長している。 その一端にはO-157に代表される病原性大腸菌による集団食中毒事件等の食品汚染再発防止もあるが、一般市民の中には、抗菌グッズが無ければ(根拠に欠ける)強い不安を覚える人もあり、同種市場の拡大を、社会病理と見なす人もある。 これらの抗菌グッズでは、銀やその他の物質を合成樹脂に混ぜて用いることにより、製品表面で細菌や菌類が繁殖できないようにしているが、それとて一定の環境下で利用している場合に、その機能が保たれているため、その利用方法が正しくない場合には、期待される機能が発揮されない場合も見られる。また製品によってこの機能が充分でない・または消費者が過信した場合に、より好ましくない事態が発生するケースも見られ、国民生活センター等では注意を呼び掛けている。 なお、衛生的過ぎる環境下では、感染症にかかる機会やさまざまな雑菌と接触する機会が減っていると見られ、それにより成長期において正常な免疫を獲得できないケースもあると考えられている。花粉症をはじめとしたアレルギー疾患は機能異常を起こした免疫が、本来はさほど危険ではない物質に対して過剰に反応する疾患であるが、それらが近年になって著しく増加した要因に、この衛生的過ぎる環境が影響していると考える説(衛生仮説)もある。
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