直接的作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/22 22:41 UTC 版)
スーパー抗原が膨大な数のT細胞の抗原受容体に結合することで、サイトカイン産生を亢進させる一方で、その後は、このようにして不用意に活性化されたT細胞がアポトーシスを起こして速やかに消失することで免疫抑制を招いてしまう。 まず、スーパー抗原による刺激が抗原提示細胞やT細胞の反応(主にTh1ヘルパーT細胞中心の炎症反応)を誘導する。この過程における主要な産物としてはIL-1、IL-2、IL-6の他、TNF-α、IFN-γ、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1αとMIP-1β)、単球遊走因子(MCP-1)がある。このような無秩序なサイトカイン、特にTNF-αの放出は「サイトカイン放出症候群(サイトカインストーム、Cytokine storms)」と呼ばれるが、これは全身に過剰な負担をかけるとともに発疹や発熱を生じ、最悪の場合には多臓器不全や昏睡、死にいたる。スーパー抗原に長時間暴露されるとIL-10の産出を招き、活性化されたT細胞の欠如やアネルギーが起こって感染症につながる。というのも、IL-10はIL-2やMHCクラスII分子や抗原提示細胞の表面にある共刺激分子の産生を抑えるからである。こうした影響下では、抗原刺激に反応できないような記憶細胞しか生まれない。 このような免疫細胞の不活性化を可能にするメカニズムの1つとしてIL-10のようなサイトカインを介したT細胞の抑制があるのだが、その他にも、MHC分子の架橋が造血系を抑制するようなシグナルを活性化し、Fasを介したアポトーシスを引き起こすというものもある。IFN-αもスーパー抗原に対する長期間の暴露により生じる産物である。これは自己免疫に関わっているサイトカインであって、川崎病のような自己免疫疾患はスーパー抗原で引き起こされることが知られている。 スーパー抗原でT細胞が活性化されるとCD40リガンドの産生が誘導され、IgMやIgGやIgEへのイソタイプスイッチ(クラススイッチ)が活性化される。 要約するに、T細胞はスーパー抗原で活性化されると過剰なサイトカインが分泌され、負のフィードバックの結果としてT細胞の抑制と欠失が起きる。微生物の毒素やスーパー抗原は組織や臓器に傷害を与えるという毒素性ショック症候群を引き起こす。最初の炎症を切り抜けた場合には、もとの細胞はアネルギーや欠失を起こし深刻な免疫不全に陥る。
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