皇帝の別荘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 04:08 UTC 版)
ネミ湖を含むカステッリ・ロマーニ地方(ローマの古城という意味)はローマから25kmと近く、きれいな空気、汚染されていない水と夏の涼しい気候のため、ローマ帝国時代から皇帝や貴族、裕福なローマ市民の別荘が多く建てられた。ネミ湖の隣にあるアルバーノ湖の湖畔の町カステル・ガンドルフォには、歴代のローマ教皇が避暑用に用いたガンドルフォ城もある。また、ネミ湖は火口壁に遮られ強い風が吹かないことから独自の気候を持っており、湖の奥深さと光景の美しさは自然と人の心を惹き付け、ローマの貴族の中には湖畔に夏の別荘を建てる者が現れた。ジェンツァーノ村の下にある古代の排水溝の近く、湖のすぐ上の台地にあるS.マリアという場所にはフレスコ画、大理石、美術品で飾られた、一世紀ないし二世紀頃に建てられた豪華な別荘跡が見られる。ガイウス・ユリウス・カエサルもここに贅沢な別荘を建てたが、好みに合わず、取り壊してしまった。ルキウス・カエサルも紀元前50年頃ここに別荘を建て、そこにユリウス・カエサルの暗殺2か月後に暗殺者ブルータスに引き合わせるためにキケロを招待した。皇帝カリグラはここに水上宮殿とも言うべき二隻の豪華な客船を持っていて、湖を遊覧していた。皇帝アウルス・ウィテッリウスが叛乱の知らせを受け取ったのは、ネミの森に滞在していた時であった。ネミの森の木立の中には、皇帝ウェスパシアヌスをたたえる記念建造物がアリキアの元老院や民衆によって建てられている。皇帝トラヤヌスはネミでアリキア市の元首を引き受けた。皇帝ハドリアヌスは自らの建築趣味に合わせて、パルティア王朝の建造物を復元した。このように、歴代の皇帝の多くがネミの別荘で過ごしている。また、ドイツの小説家ゲーテ、イギリスの詩人バイロン、フランスの作曲家シャルル・グノー等も夏にネミ湖を訪れている。
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