百鬼夜行
『宇治拾遺物語』巻12-24 風雨の夜、一条の桟敷屋に男が傾城と臥していると、軒と等しい高さの馬頭の鬼が「諸行無常」と詠じて通った。「これが百鬼夜行というものであろうか」と男は恐れ、一条の桟敷屋には2度と泊まらなかった。
『大鏡』「師輔伝」 九条殿師輔公が夜更けに宮中から退出して大宮通りを南へ下る時、あははの辻で百鬼夜行に出会った。師輔公はただちに牛車を停めさせ、轅(ながえ)をおろし簾(すだれ)を下げる。彼は笏(しゃく)を両手に持ってうつ伏し、尊勝陀羅尼を読誦する。1時間ほどして、ようやく師輔公は牛車を出発させる。随身や前駆たちには何も見えなかったので、彼らは師輔公のふるまいを訝(いぶか)った。
『古本説話集』下-51 西三條殿の若君常行が、夜、女のもとへ通う途中、美福門の前で百鬼夜行に出会った。捕らえられそうになったが、尊勝陀羅尼の護符を身につけていたので、無事だった〔*『今昔物語集』巻14-42に類話〕。
*夜、多くの鬼たちが、橋を渡って来るのに出会う→〔唾〕1cの『今昔物語集』巻16-32。
*夜、百人ほどの鬼たちが、古寺の堂に集まる→〔空間移動〕1aの『宇治拾遺物語』巻1-17。
*夜、百人ほどの鬼たちが、山に集まって酒宴をする→〔踊り〕2の『宇治拾遺物語』巻1-3。
『剪燈新話』巻1「三山福地志」 暁方、軒轅翁が庵で読経していると、1人の男が歩いて行く後ろに、ざんばら髪で裸んぼの鬼が数十匹、刀剣や槌や鑿をたずさえてついて行くのが見えた。しばらくして男は戻って来たが、今度は、金の冠をつけた福の神が百人余り、旗や幟(のぼり)を持ってつき従っている。首をかしげる軒轅翁に、男は「人を殺そうと、刀を懐にして出かけたが、そいつにも老母や妻子がいることを思い、とりやめて帰って来たのです」と言った。
*僧の後ろに、無数の餓鬼や畜生がついて来る→〔無尽蔵〕2cの『宇治拾遺物語』巻2-1。
『第三半球物語』(稲垣足穂)「夜店を出そうとした話」 夜店を出そうと、アセチレーンランプに火をつけるが、何遍やってもすぐ消えてしまう。連れの男が、「そろそろ変な奴らがはびこってきやした。こんな晩には、早く切り上げるのが利口ですよ」と言う。見ると、ペーヴメントの上を、尻尾をつけたレディーや紳士、犬の首のサムライ、鳥の頭をした公卿など、わけのわからぬ連中が充ちあふれて、音もなく行き交うていた。
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