病理検査室のない医療機関で行われる病理学的検査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/13 19:46 UTC 版)
「病理診断」の記事における「病理検査室のない医療機関で行われる病理学的検査」の解説
病理検査室のない医療機関では病理を外注するが、このとき病理医が検査センター等において病理学的検査報告書を記載したとしても、それは「診断」ではない。病理診断は医行為であり、医行為を業として行う場合は、医療機関でなければならないからである。登録衛生検査所(検査センター)は、多くの場合株式会社による営利事業が主であり、非営利性を担保できないので、医療機関開設許可が下りず、病理診断を行う医療機関(病理診断施設)は開設できないと考えられる。 したがって病理外注の場合は、検査結果に基づいて臨床医が病変について判断することになる。診療報酬上でも病理診断料N006ではなく臨床医による病理判断料N007が評価されている。なお病理学会の資料によれば、衛生検査所等での組織検査報告は年間376万回と推定されている。 日本病理学会では、保険医療機関内で診断された病理報告書は「病理診断報告書」、衛生検査所等での病理報告は「病理検査報告書」と差別化している。「病理検査報告書」はあくまで「検査報告・助言」という認識である。 とはいっても、多くの患者にとっては、掛かっている医療機関が病理診断科を標榜しているかどうか確認することは現実的ではなく、また医療圏によっては病理医が絶対的に不足しているため、病理医を招聘して病理診断科を標榜できない医療施設も多いのが現状である。病理診断報告書と病理学的検査報告書を差別化するだけではなく、すべての病理報告書について病理診断報告書にする方策が求められる。 登録衛生検査所の一部では、医師でも臨床検査技師でもないものが顕微鏡を覗いて、病理標本の所見を書き、「病理医が確認」して病理学的検査報告書を作成している実態が知られている。検体検査なので検査はだれが行ってもよいという医療法解釈に従っており ただちに違法とは言えない。しかし病理学的検査報告書に「病理診断」を記載し、病理専門医の記名もあるので、病理学的検査を外注している医療機関に、検査センターで医行為としての「病理診断」が行われているとの勘違いが生じている可能性があり、臨床医から検査結果を聞く患者は真の「病理診断」と理解することになる。まさに「国民に病理診断を確実に提供するものとはなっていない」といえる。2016年9月日本病理学会は理事長名で「すべての「病理診断」を「医療機関」で行うために保険医療機関間の連携による病理診断の活用を」のメッセージを発し、衛生検査所や大学講座における「病理検査報告」は、連携病理診断による「病理診断」に移行させる必要があるとした。 病理医不足が危機的状況にあるといわれて久しいが、病理学的検査の標本ではあっても、医療機関において病理医が病理診断を行い、症例を蓄積してたゆまない病理診断の質の向上を行い、若手病理医が症例を学ぶ環境を作ることが、病理医不足解決には必要である。病理医自身が医療機関に出向き、医行為である病理診断の継続的な実践に向かう必要がある。病理医が医療機関に向かうよう、行政・中医協の理解や診療報酬による誘導も欠かせない(病理診断診療報酬において医行為を擬似市場から外す)。 たとえば連携病理診断(テレパソロジーや保険医療機関間の連携による病理診断)は、保険医療機関間の連携で行われるので、医療機関に所属する若手病理医にとっては症例を学ぶ機会が広がり、しかも病理診断料の診療報酬算定が可能である。
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