生体異物の代謝
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 05:01 UTC 版)
生体は異物を代謝することで除去する。この過程は異物の不活性化と排出からなり、主に肝臓で行われる。排出経路は、尿、糞便、呼気、汗である。生体異物の代謝を担う肝酵素は、まず不活性化(酸化、還元、加水分解や水和)を行い、その後活性型二次代謝産物はグルクロン酸、硫酸やグルタチオンと抱合されて胆汁や尿へ排出される。こうした生体異物代謝に関与する酵素の例としては、肝臓ミクロソームのシトクロムP450が挙げられる。こうした生体異物の代謝を担う酵素は医薬品の分解も担うため、医薬品産業において非常に重要である。独特なシトクロムP450システムを持つ種としてはDrosophila mettleri(英語版)があり、この種は生体異物耐性を利用して、植物由来の壊死性の滲出液を含む土壌など、より広い範囲での生育を可能にしている。。 生体は代謝により異物を毒性の低い形態にしてから排泄することで除去することができるが、時にはこうした代謝によってより毒性の高い形態に変換されることもある。この過程はbioactivation(生体内活性化)と呼ばれ、微生物叢に構造的・機能的変化を引き起こす可能性がある。微生物叢が生体異物にさらされると、物質によって特定の細菌集団のサイズが増大したり減少したりすることで、微生物叢のコミュニティ構造が破壊される。結果として生じる機能的変化は物質によって異なり、ストレス応答や抗生物質耐性に関わる遺伝子の発現上昇、産生される代謝物のレベルの変化などが生じる。 生物は生体異物に耐性を持つように進化することもある。一例として、イモリによるテトロドトキシンの産生と、その捕食者であるガータースネークのテトロドトキシン耐性の共進化が挙げられる。この捕食者と被捕食者のペアでは、進化的軍拡競争によりイモリでは高いレベルの毒素が産生され、それに応じてヘビには高いレベルの耐性が備わっている。この進化的応答は、ヘビで毒素の作用するイオンチャネルの形状の変化による、毒素に対する耐性の獲得に基づいている。生体異物耐性機構のもう一つの例はABC輸送体の利用であり、昆虫で多くみられる。ABC輸送体は毒素を細胞膜を越えて輸送し、細胞内への蓄積を防ぐことで耐性に寄与する。
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