現代養豚の課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 08:03 UTC 版)
現代の養豚ではトウモロコシを主体とし、大豆カスや小麦を加えた飼料を用いている。これらの多くは輸入に頼っており、安全保障上の問題になっている。更に、輸入された飼料の蛋白質、アミノ酸に由来する窒素化合物はその一部が豚の屎尿の、またその他の一部は畜産物を食べた人間の糞尿や生ごみの形で、土壌に過剰蓄積されるリスクがある。これらは陸上生態系に対して、また降水による水循環や下水を通じた河川や沿岸海域に過剰供給されて、河川生態系や海洋生態系に対して重大な影響を与えている。つまり、アメリカ合衆国などの飼料作物生産国の工業的窒素固定によって生成した窒素化合物が、飼料輸入国である日本などの国土や周辺海域に一方的に蓄積していき、富栄養化という形で生態系の異常を引き起こすという物質循環の異常を引き起こしている。同様のことはリン酸などのリン化合物に関しても言える。 また、国土内での物質循環を完結させて、国土の過剰な富栄養化とそれによる生態系の破壊を防ぐためには生ごみなどの食品廃棄物を飼料として活用することが解決法の一つとなるが(1970年代まで小規模な場合には残飯を餌として与えていたことが多かった)、食品廃材としての屑肉を飼料に用いる場合は、旋毛虫感染(旋毛虫症)が問題になる。近年、生ゴミや食品の残渣を飼料の原料にする研究がなされ、現代社会に要求される安全性を確保した上で、飼料の自給率向上と還元型社会への再接近を図っている。 このほかにも養豚副産物の減量・活用に向けた研究は進められている。東京農工大学は豚の尿に稲藁を混ぜて発酵させ、燃料用メタンガスを効率的に発生させる技術を開発した。
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